アクティベータ・メソッド

保井 志之DC



AMリサーチに関して⑥AM下肢長検査(121号掲載)

アクティベータ・メソッド(AM)で最初に注目されるのは、器具によるアジャストメントです。AMといえば「アクティベータ器」というニュアンスで、一般の人やカイロプラクターでさえもそのように捉えている傾向があるようです。アクティベータ器は、長年の研究で人体に有効な振動器具として発展してきました。もちろん、アクティベータ器が繰り出す振動には有効な作用はありますが、臨床上大切なのは、どの部位に問題(サブラクセーション)があり、どの部位に問題がないのかが判断できることだ、とAMを長年活用しているカイロプラクターは考えています。 

AMの本質を知らない臨床家は、恐らく症状のある部位にアクティベータ器を当ててアジャストすれば、症状が改善されるのではないかと短絡的に考えるかもしれません。実際にそのようなシンプルな方法で、効果はある程度引き出されると思います。しかしながら、AMの臨床的な価値は、「どこを、いつアジャストし、いつアジャストしないか」にあるとアクティベータの臨床家は考えています。カイロプラクターとして背骨を中心軸として、下から上へ、すなわち抗重力の関係性を考慮した治療哲学に基づいて、症状の有無に関わらず背骨の中心軸のバランスを最初に調整します。 

例え、肩関節関連の症状でも、まずは、背骨の中心軸を調整した上で肩関節などの関節系、筋肉系の機能異常の調整を行います。それは、枝葉である四肢バランスを調整しても、幹となる中心軸(背骨)のバランスを整えていないと、抗重力に関係した普段の生活に戻ることで、軸が乱れて、枝葉となる末端の四肢関節にも乱れが生じる可能性があるという考え方に基づいています。そして、中心軸(背骨)や四肢関節に関係するバランス異常、すなわち神経関節機能障害(サブラクセーション)を特定するのが下肢長検査です。下肢長検査に関連する歴史は以前にもご紹介させていただきましたが、半世紀に渡っていくつかの研究論文が発表されています。 

その中でも客観的に分かりやすく示された下肢長検査法の研究データがあります。「Dewitt JK, Osterbauer PJ, Stelmach GE, Fuhr AW. アイソレーションテストによって生じた下肢長変化の視電計計測。JMPT 1994; 7(8):530-8」この研究では、靴にセンサーを取り付けて、計測器で靴の動きを記録するというものです。頸椎部のアイソレーションテストで被験者に頸椎を伸展してもらい、靴の動きを記録します。頸椎部に問題がない場合は、左右の靴の動きの波形はほぼ同じになりますが、頸椎部に問題がある場合、左右の靴の動きの波形にズレが生じます。この時、靴には手を触れていませんので、客観的に靴の移動、すなわち下肢長が変化した様子が示されます。 

臨床現場において、AMを活用して結果を出している臨床家にとって、下肢長検査法の反応は当たり前のこととして使っていますが、AMを知らない臨床家にとっては、このような科学的研究データは大切な信頼指標になるかもしれません。 


AMリサーチに関して⑤アクティベータ器による骨粗鬆症と安全性(120号掲載)

カイロプラクティックによる徒手療法の安全性は昔から注目されるテーマです。日本国内においてもカイロプラクティックの法制化で議論されるのは安全性です。カイロプラクティックアジャストメント(徒手矯正)は様々な手法がありますが、関節を手技で操作して素早い刺激を関節に加えるカイロプラクティックアジャストメントに比べて、アクティベータ器を使用したアジャストメントは安全性が高いことは臨床的にも明らかです。徒手矯正によって引き起こされる医療過誤で注意を必要とされる病気の一つに骨粗鬆症があります。骨粗鬆症の程度にもよりますが、胸部への強い徒手矯正によって肋骨骨折を生じさせる危険性があります。 

もしも、骨粗鬆症の患者にアクティベータ器によってアジャストメント(振動刺激)を行った場合、骨折を生じさせる確率はどれくらいでしょうか?私が知る限りではそのような事例は聞いたことがありません。今回ご紹介させていただく研究論文は、危険性というよりも、アクティベータ器による骨粗鬆症への振動刺激がプラスの効果を発揮させるということを示した画期的な研究です。この研究論文は2017年11月に発表されました。研究はA.López-Herradón、R. Fujikawaらによって、スペインのマドリードカイロプラクティックカレッジの協力で行われました。研究テーマは、『卵巣切除ラットの骨と骨格筋に対するカイロプラクティックマニピュレーションの影響』です。 

動物実験ではラットが使用され、一つ目のグループは卵巣を切除したグループ(OVX)、二つ目のグループは偽手術をしたグループ(Sh)に分けました。卵巣摘出(OVX)モデルラットは骨粗鬆症の実験モデルとして最も汎用されています。卵巣摘出モデルは、エストロゲン欠乏により代謝回転が亢進し、長管骨の骨端部や椎体の海綿骨が顕著に減少することが知られています。偽手術のラットと卵巣摘出のラットのグループは、さらに徒手矯正を行わないグループとアクティベータ器5による徒手矯正のグループに分けられました。徒手矯正のグループのラットはアクティベータ器5を使い振動刺激の強度の設定は1レベルで行われました。矯正部位は脛骨結節で左右の後肢で行われました。右後肢は実際に調整を行い、左後肢は空打ち(空気中で調整)によるニセの調整を行い、軽く脛骨結節に触れるだけでした。 

実験開始から10週間後に卵巣摘出のラットで骨粗鬆症が確認されてから、アクティベータ器5による徒手矯正が開始され6週間で週に3回繰り返されました。施術を完了してからラットの骨量を測定しました。さらにCTを使用して、各グループの長骨のいくつかの骨梁および皮質骨パラメーターを評価しました。結論的にアクティベータ器5のカイロプラクティック・マニピュレーションによる骨の改善は、卵巣摘出 (OVX) ラットにおける大腿四頭筋および前脛骨筋における MGF (機械成長因子) 発現の増加と関連していました。これらの研究成果は、骨格筋を標的としたアクティベータ器によるアジャストメント(振動刺激)(カイロプラクティック・マニピュレーション)が少なくとも部分的に骨粗鬆症を改善できるという概念を支持しています。つまり、それは、骨粗鬆症の患者にプラスの効果を発揮する可能性があるということです。 

ページ上部へ戻る