アクティベータ・メソッド

保井 志之DC



創始者ドクターファーとの出会いから今日まで その2(128号掲載)

ドクターファーとの最初の出会いから、約5年後に再会することになりました。それは、米国のカリフォルニア州で開催されたAMのセミナー会場でした。当時、出版社から依頼されて、私が翻訳を手がけたアクティベータ・メソッドのベイシック・マニュアルの小冊子が出版されたところでした。臨床でもアクティベータ・メソッドを取り入れて、本格的に学び直すために、米国でのAMセミナーを受講することにしました。

私はセミナーの昼食時に、たまたまセミナーに参加していた歯科医のドクターとレストランで昼食を共にしていました。すると、ドクターファーのスタッフチームが近くのテーブルで食事をしていました。一瞬、ドクターファーと目が合ったのでご挨拶に行きました。自己紹介してベイシック・マニュアルの翻訳をさせてもらったことを伝えると、夏に開催されるインストラクターセミナーに来ないかといきなり招待されました。数ヶ月先に予定されたセミナーだったので、私もすぐに返事をしました。

もしも、ランチタイムにドクターファーのスタッフチームと離れたテーブルだったら、もしも、ドクターファーと目が合わなかったら、恐らく私は自己紹介しなかったと思います。何かの引き寄せなのかなとも考えたりします。でも、この時の挨拶がきっかけで20年も続くご縁になるとは思いも寄りませんし、この「たまたまの出来事」が、これほど長いドクターファーとのご縁になるとは思っていませんでした。その時のドクターファーの直感的な判断が興味深いところで、何かを感じていただいたのかもしれません。

それから数週間後にAMI社から正式にAMインストラクターセミナーの招待状が届きました。会場はAMI社本部があるアリゾナ州です。私にとっては初めてのAMインストラクターセミナー参加であり、それは丁度、AM開発から30周年の節目の年で、著名な講演者が集うハイレベルなセミナーでした。会場は一流のホテルで総勢200人ほどの関係者が集いました。また、アクティベータ・メソッド・カイロプラクティック・テクニック(AMCT)の初版のテキストが全米で販売された年でもありました。私は、アクティベータ・メソッドのベイシック・マニュアルの小冊子の翻訳をさせていただいたという自然の流れで、AMCTの日本語版の翻訳許可をドクターファーからいただきました。その後、DCの先生方と翻訳チームを作って翻訳を進め、AMCTの日本語版が日本で初めてエンタープライズ社から出版されることになりました。

その後、世界中のAMインストラクターが終結する恒例のAMI社インストラクターセミナーには、1997年の初参加から今日に至るまで、毎年のように参加させていただくことになりました。当時はそれほど長く継続して参加するなどとは思ってもいませんでした。そこに招待されるインストラクターは数十名ほど在籍していましたが、入れ替わりもありました。 10年以上も継続して毎年再会するドクターもいました。私は今では古株組のインストラクターになっています。インストラクターセミナーでは最新の研究に関するプレゼンテーションから、AMI 社公認のプレゼンターとしてのスキル向上のためのトレーニングなども受講させていただきました。

毎年、AM認定試験の筆記テストが更新されるので、インストラクターもそのテストを受け、そして、グループに分かれて下肢長検査法などの実技トレーニングをお互いに行いました。それぞれのインストラクターが互いに治療し合い、複数のインストラクターからアジャストメントを受けるという体験はとても勉強になりました。特に勉強になったのは、同じテクニックを使うにしても、多少なりとも違いがあるというそれぞれの経験者の「個性」を学べたことです。私にとって、それぞれのインストラクターの異なる「個性」を学べたことは、その後の指導者として生かされていると思います。アクティベータ・メソッドを使うトップクラスのインストラクターの技法をライブで観察できる訳ですから、今思うと、とても贅沢なセミナーだったと思います。また、セミナーのみならず、パーティーやプールサイドなどで、幅広くインストラクター仲間と談話ができたことは貴重な体験でした。


創始者ドクターファーとの出会いから今日まで その1(127号掲載)

AM(アクティベータ・メソッド)の創始者であり、AMI(アクティベータ・メソッド・インターナショナル)社の会長であるドクターファーは、1939年9月2日に米国のミネソタ州に生まれました。2022年現在、83歳になります。ドクターファーは12歳の時にカイロプラクターになることを決めました。ドクターファーは幼少の頃に喉の痛みに悩まされていました。母親に連れられて、後のAMの共同創始者となるドクターリーのクリニックで施術を受けて、11回ほど通って喉の痛みが完治したとのことです。そして、そこから将来進むべき道が決まったそうです。40年以上に渡った臨床と研究活動の第一線からは離れていますが、現在でもAMI社や国立カイロプラクティック研究所の会長として精力的に活動されています。

 最近のニュースでは、ドクターファーの母校である米国、セントルイスにあるローガン大学にドクターファーの名前が付けられた「Fuhr Science Center」の建設が、来年の春から始まることが決まりました。ドクターファーは、この研究棟の建設に多額の寄付を行いました。また、1981年から1991年まで、ローガン大学の理事会で財務委員長を務めました。2016年、ドクターファーはローガン大学のOBとして、永続的な奨学金であるForever Chiropractic、Forever Loganキャンペーンの議長を志願して積極的に活動を行いました。セミナーや研究活動以外にもカイロプラクティック業界に利益をもたらす地道な活動を継続的に行なっていたことが伺えます。

本コラムで、ドクターファーとの出会いから今日に至るまでのエピソードをいくつかご紹介させていただきます。思えば私が初めてドクターファーと出会ったのは、米国アイオワ州のパーマカイロプラクティック大学在学中の頃で、丁度、全般的な基礎医学教育を終えて、本格的にカイロプラクティックのテクニックを習い始めた1992年頃だったと思います。パーマー大学は、カイロプラクティック発祥の地でもあり、様々なカイロプラクティックテクニックを学ぶ機会がありました。カイロプラクティックテクニックの創始者たちが、自分のテクニックを紹介するために大学を訪れることも多く、当時、学生たちは様々なカイロプラクティックのテクニックの創始者の講演を、直接クラスで拝聴することが出来ました。

パーマー大学では、通常のカリキュラムの合間に、臨床現場で活躍しているOBや研究者の講演が毎月のように行われていました。ドクターファーはパーマー大学のOBではありませんでしたが、アクティベータ・メソッドによる最新のリサーチなどの報告に、パーマー大学を訪れていたようで、テクニックのデモンストレーションも披露してくれました。学生の私にとっては、当時はドクターファーも数多くの演者の一人でしかありませんでした。徒手によるアジャストメントにこだわっていた私にとって、当時はドクターファーのテクニックのデモンストレーションよりも、客観的なデータに基づいたリサーチのプレゼンテーションに興味を持った記憶が残っています。

当時を振り返ると、最初はそれほど印象深い出会いではありませんでしたが、こんなにも長期に渡るお付き合いになるとは思いもしませんでした。ドクターファーとのご縁に、何か不思議なつながりを感じています。その後、パーマー大学の選択科目の一つとして、アクティベータ・メソッドを履修しました。ドクターファーの講演がきっかけという訳ではなく、最初は、パーマー大学のクリニックエクスターンの先輩が大学クリニックで使用していたことに影響を受けました。アクティベータ器の使用よりも、サブラクセーションを簡便に特定する検査法に興味を抱いて履修しました。また、様々なカイロプラクティックを幅広く学びたいという好奇心も旺盛だったと思います。留学の期間も限られていたので、当時は貪欲に大学のキャンパス内のセミナーや、キャンパス外のセミナーにも数多く参加しました。アクティベータ・メソッドもその中の一つの選択肢でした。その2に続く


AMセミナーについて④(126号掲載)

アクティベータ・メソッドが50年以上も継続されている背景には、共通した基本のプロトコルを守り続けたことにあると思います。創始者であるドクターファーの指導から始まり、任命されたインストラクターが、各カイロプラクティック大学で上学年の学生たちに教え、さらには各地域で開催されるセミナーにおいて、臨床現場で活躍するドクターに教える。そして、年に一回、インストラクター一同が、AMI社が主催するインストラクターセミナーに集結します。そこでは最新の研究成果を学び、筆記試験や技術の指導法やプレゼンターとしての研修を受け、さらにはお互いに、技法や指導法のすり合わせによって統一性を確認し合う。このような地道な研修活動に加えて、最新の研究情報の共有によってインストラクター同士の統一性が確立されています。おそらくこの様な「統一性」が確立されているセミナーは他のカイロプラクティックテクニックと比較しても突出した合理性をもったシステムではないかと思います。

日本国内では、ドクターファーの監督下で私が、日本国内の責任者として米国のセミナーシステムの基準に従ってセミナー活動を継続しています。時折、受講生の中には、AMセミナーを自ら開催しようとする者もでてきたりします。これは、知的財産権の侵害にあたる行為なので、法的に処罰を受ける可能性があります。日本人は米国などに比べると知的財産権に関する意識は低いように感じます。以前、AMI社から依頼を受けた弁護士から、無許可のAMセミナーを開催している人に対する調査協力を求められたことがありました。日本国内ではそのような問題が生じないように、数年前から著作権保護に関する規約を周知していただくように、受講者に毎回お願いしています。

効果的な施術技法の継承には、知的財産権の保護も大切ですが、基本となる施術の本質を伝え続けることも重要な課題になります。人が人に伝える以上はどうしても多少の情報伝達の齟齬や、思い違いが生じます。同じ技法を伝えるにしても、十人の受講者がいれば、十人の解釈の仕方、捉え方は微妙に異なります。その違いを擦り合わせていくために、セミナーを繰り返し受講していただくことが求められます。また、セミナーで習ったことを臨床現場で実際に使うと、色々な課題が出てくるはずです。そして、セミナーに再度参加して、その課題をできるだけ消化していく、この繰り返しによって、本質をつかんでいくというのが、マスターできている人の標準的な行動パターンです。中には一回のセミナー受講で、全てをマスターできるかのように期待されている方もいますので、その辺りの受講者の期待に対する管理には難しさを感じています。

どのような職種においても、高みを目指すことを望むのであれば、「インプット」と「アウトプット」を繰り返す必要があります。例えば、将棋において、最初はそれぞれの駒の進め方などのルールを学びます。そして、対戦を繰り返しながら、どのようにすれば強くなれるのかを学ぶわけですが、強くなっている人は詰将棋という練習問題を繰り返し行い、実践的な養成に役立てます。施術の世界も同じで、臨床で効果的な施術法をマスターするためには、詰将棋のような事例を何百、何千と繰り返すことによって、段階的に脳に学習させて身についていく必要があります。私たち指導者は、そのような基本となる学習方法も伝えていくことが、AMを日本国内に着実に啓蒙していくための必要不可欠な教育指針だと考えています。


AMセミナーについて③(125号掲載)

年に4回から5回ほど、20年以上も同じセミナーを繰り返し開催していると、色々な課題もでてきます。セミナー開催当初は、私一人でプレゼンターを務めて開催していましたが、少しずつセミナー会場での協力スタッフをスカウトして、インストラクターの育成活動も行っていました。当時はライフコンパスアカデミー(LCA)という治療家を育成する組織ではありませんでしたが、ANJ(アクティベータネットワークジャパン)の組織としてセミナー活動に協力してくれるインストラクターの育成を始めました。私自身が米国のAMI社主催のインストラクターセミナーに、毎年継続して参加していましたので、その経験に基づいて、日本国内でもインストラクター育成のためのセミナーを毎年開催していました。今ではとても心強いインストラクターチームとして協力していただいていますし、AMI社からは、いつも日本のインストラクターチームの活躍ぶりに、お褒めの言葉を頂いています。

AMI社が提供しているアクティベータ・メソッド(AM)セミナープログラムは、大きくは3つのプログラムに分かれています。当初はTrack1.2.3という呼び名でした。Basic(基礎編)、Intermediate(中級編)、Advance(上級編)、さらには Extremity (四肢編)、Clinical(臨床編)などと、20年の間に各ブログラムの呼び名の変更がありました。しかしながら、基礎編のプログラム内容はほとんど変更がありませんでした。また、中級、上級に関しては、四肢や脊椎、TMJ(顎関節)、頭蓋骨などのプログラムの組み合わせの変更がありましたが、各テーマの中身自体の本質は昔から変わっていません。AMセミナーではテクニックのプログラム以外に、AMの歴史やリサーチに関するプログラムもあります。その講座では、AMの歴史や最新のリサーチに関する情報を提供します。リサーチに興味にある方にとっては、とても興味深い内容だと思いますが、受講者は全般的にテクニックの実技習得の方に関心が向く傾向にあるようです。

毎回一回のセミナー時間は、二日間で12時間です。この12時間というのは米国の卒後教育プログラムに倣って、日本国内でも同様にカリキュラムを組んで、当初から継続的に開催しています。開催当初は土曜日と日曜日でしたが、途中から日曜日と月曜日に開催していました。昨年度からコロナの影響を受けて、座学は5時間のオンライン講義、実技は1日7時間の実技セミナーを今年も開催しています。20年ほど継続していた二日間のセミナーから、オンラインと1日7時間の実技セミナーとの組み合わせで行うハイブリッドのセミナースタイルには、受講者側、主催者側にも抵抗がありました。必要に迫られて、慣れない動画撮影やインターネットのオンライン操作など、最初は試行錯誤の連続でしたが、いざ、開催してみると、意外に学習効果が高いということが分かってきました。

何事も大きな変化には抵抗がつきものですが、その壁を乗り越えると大きな学びや将来への発展があることが分かりました。今回のパンデミックは多くの人々にとっては災難でしたが、私たちはまさに、ピンチをチャンスに変えることができたことを実感しております。インターネットの進化のスピードに追いついていくのは、いささか大変だと感じることもありますが、学習効果を高めるためには必要不可欠な学習ツールになるとことは間違いないようです。


AMセミナーについて②(124号掲載)

日本国内での第一回目のAMセミナーが、AMI社公認の公式のプログラムとして開催されたのは2001年6月でした。当時、日本国内では唯一の国際基準のカイロプラクティック大学だったRMIT大学日本校で開催されました。それは、卒後教育セミナーの一環として米国の制度に準じて行われました。第一回目には32名ほどのカイロプラクティック大学の学位保持者と学生が集まり、その後、40名~50名ほどの受講者がコンスタントに参加されました。当初は、米国の制度に準じて国際基準の学位保持者と、その学生に限定した受講資格を設けていましが、2006年より、AMセミナーに参加できる受講者枠を広げ、国内有資格者も参加できるように規約を改訂しました。その後、AM認定者が着実に全国に広がり、だんだんと日本国内での認知度も高まってきました。

カイロプラクティック大学の学位保持者以外に受講者枠を広げる際にネックになったのは、受講者のバックグラウンドの違いです。米国で行われているカイロプラクティックの卒後教育セミナーは、カイロプラクティック大学において、基礎解剖はもちろんのこと、脊柱や四肢関節の触診法、理学的検査法などの訓練は習得済みです。通常は臨床的な基礎知識や技能が備わっているという前提で卒後教育セミナーを受講します。日本国内で受講者枠の基準を広げるにあたって、参加されている受講者間の知識や技能のバックグラウンドに違いが存在していました。そこで、国際認定者と国内認定者の認定試験受験条件に違いを設けました。国内認定者はセミナー回数を多く受講することで、バックグラウンドの違いを埋め合わせていくようにしました。受講枠を広げて15年になりますが、日本国内での独自の制度はうまく機能しているようです。

私はカイロプラクティック大学で、選択科目としてAMセミナーを受講し、大学外で行われているAMセミナーにも参加、そして、年に一度開催されていたAMI社主催のインストラクターセミナーに十数年継続して参加し続けた経験があります。そのような経験体験は、AMセミナー教授内容に限らず、AMセミナー運営方法などのシステムにも活かすことができました。日本国内の責任者として日本のAMセミナーを、よりクオリティーの高い内容にするという目標を常々もっていました。日本国内で参加されている先生方は、コツコツと臨床経験を積み重ねて開業されている方が多く、カイロプラクティックを学ぶ姿勢に情熱を感じました。そのような意味も含めて、充実したセミナー内容だったと思います。

また、日本国内では世界共通のAMセミナープログラムの教授法に、コーチングの手法も加えて、さらに学習効果を高める工夫をしています。長年、受講者の成長具合を観察していると、インストラクターの手を借りて、手取り足取り教えてもらおうとする人は伸び悩み、インストラクターの技術を見て盗もうとする人たちは、成長の度合いが早い傾向にあることが分かってきました。昔から「見習い」ということが重要視されていますが、まずは自らが見て、その技術の詳細を掴み取ろうとすることが、技術習得の近道だということが明らかに分かってきました。手取り足取り教えてもらうのを待っている人は成長の度合いが低くなるのです。このようなコーチングを組み入れた指導法は日本独自であり、技能習得の基本になっています。


AMセミナーについて①(123号掲載)

2001年度から開催された、アクティベータ・メソッド・インターナショナル(AMI)社公認のアクティベータネットワークジャパン(ANJ)のセミナー活動は、今年で20周年を迎えました。2020年度の最後のセミナーで83回目を迎え、2020年度までの受講者数はのべ4060名になりました。この業界で長く活躍されている先生によると、日本国内で、同じブランドのカイロプラクティックセミナーを20年継続し、83回ものセミナーを行なっている団体は他にないといいます。このように長く継続して活動できた背景には、ドクターファーを始めとするAMI社との協力関係、インストラクター、スタッフの協力、そして、熱心に受講してくださっている先生方の情熱のお陰です。2020年度末にはアドバンス認定者77名、ベイシック認定者43名、合計120名の認定者が全国の都道府県で活躍しています。

日本国内で行われているアクティベータ・メソッド(AM)セミナーの基本的なプログラムは、全て米国の教材をそのまま日本語に翻訳し、ドクターファーの監督下で日本国内の代表者としてセミナー活動を行なってきました。ドクターファーとドクターリーの二人の創始者が始めたAMセミナーは、半世紀以上の歴史があります。現在でも、米国のカイロプラクティックの歴史を通じて継続されている卒後教育の伝統に従って開催されています。セミナー開催当初は、非公式なセミナーとして始まり、1970年にカリフォルニア州のガーデングロープという街のカイロプラクティッククリニックで第一回目のセミナーが開催されました。10名ほどのドクターが参加して下肢長検査法や検査手順、骨盤、腰椎や頸椎の器具を使ったアジャストメントが紹介されたと言います。それは慎ましいセミナーでしたが、今となっては歴史的なスタートになりました。

現在では、ほとんどのカイロプラクティック大学で、選択科目のテクニックとして教授され、週末のセミナーは大学と共同して、カイロプラクティックの免許更新の単位として認められています。米国教育の風土として、大学を卒業して専門職の免許を習得しても、「継続して勉強し続けるべき」という精神が根強くあります。もしも、セミナー参加の単位が不足している場合は、免許が更新できないという厳しい規定があります。また、AMI社のホームページに登録されるAM認定者になるための認定試験制度があります。認定者の認定を維持するためには、年に最低一回はセミナーに参加しなくてはなりません。

日本ではカイロプラクティックの法律がありませんが、基本的には米国の卒後教育システムに習ってAMI社と同じ認定制度に準じてセミナーを開催しています。現在ではカイロプラクティック学位保持者が属する国際認定者と国内有資格者が属する国内認定者に分けています。米国と同じ筆記試験と実技試験に合格したAM認定者は、ANJのホームページに登録されます。日本国内インストラクターは試験官として厳密なトレーニングを受けて、厳正な試験を行います。特に実技試験に関しては、厳しい審査を行なっていますので、一回でパスするには、よほどのトレーニングを積んで準備して臨まなければ合格することはできません。日本の試験制度は決して米国のドクターには劣らない、いやそれ以上の厳しい試験だと私は感じています。


AMリサーチに関して⑦下視長検査法の「科学」と「アート」(122号掲載)

 アクティベータ・メソッドの下肢長検査の研究は、長い歴史があります。Dr. Fuhrと研究者たちで最初にAM下視長検査について、研究され科学的論文が掲載されたのは1989年でした。その後、腹臥位下肢長評価の再現性を測るために他の研究者たちによって追試され、いくつかの研究論文が学術誌に掲載されています。(Fuhr, Osterbauer, Chiro Tech 1989, Keating, JMPT 1991, Cumming et al, Spine 1993, Dewitt et al, JMPT 1994, Schneider et al, JMPT,2007, Holt et al, JMPT, 2009 ) そして 、それらの文献では、いちように「腹臥位検査の信頼度は、中ぐらいから良いとの結論に至る」とされています。

20年ほど前、AMI社主催のインストラクターセミナーで、ある物理学者の講演会見がとても印象深かったのを覚えています。その物理学者は、Dr. Fuhrから依頼されたAM下肢長検査の信頼度に関する研究を行った成果を発表していました。その学者は、「生きた人間の身体を、科学的に評価するのはとても難しいことである。なぜなら、科学というのは常に同じ条件下で評価しなければならないからである・・・」確かに機械仕掛けのロボットとは異なり、生きた人間を一定の同じ条件下で実験することは不可能です。例え同じ空間、時間、体勢などの条件下で実験したとしても人間は呼吸をしているし、消化器系や循環器系は常に動いています。ましてや心は意識的にも無意識的にも動いており、その微妙な影響は自律神経系の信号を通じて筋肉、骨格に影響を与えます。純粋な科学という視点に立てば、至極当たり前のことですが、あえて科学的、客観性という視点に近づけて挑戦し続けたDr. Fuhrの科学的検証にかける情熱も素晴らしいと思います。

また、科学の世界において「観察者効果」という現象があり、観察するという行為が観察される現象に与える変化を指すと言われています。これは、量子物理学をはじめ、社会科学、社会心理学の領域においても幅広く使われている用語です。「誰にも見られていない時は波のように振る舞い、観測者に見られていると粒子のように振る舞う」と言われており、最先端の科学といわれる量子脳、量子コンピュータ、量子暗号など量子と名のつく領域はとても不可思議なことのように感じます。私たちが臨床で行っている下肢長検査も「不思議だ・・・」と一般的には言われる検査法ですが、最先端の科学の不思議さに比べれば微々たるものだと思います。

下視長検査法も臨床現場で数十万回も繰り返し行っている臨床家にとって、「観察者効果」は感覚的に通じるものがあります。例えば、下肢長検査において、検査者(観察者)が骨の長さ、すなわち構造的な左右差を見ようとする場合と、筋肉の緊張度、すなわち足関節、膝関節、股関節、骨盤における連なる関節の遊び、それらに関連する筋トーヌス(緊張度)の違いを観ているのとでは、同じ患者を見ても、違いが生じます。検査者が関節の遊びに関連する筋肉の緊張度を観ようとすれば、左右の相対的な違いは見えますが、そこを観ようとしなければ見ることはできません。このような現象も「観察者効果」と言えるのではないかと考えています。AMセミナーで下肢長検査の評価法に悩んでいる受講者には、「検査者が何を見ようとして検査をしているかで、反応の現れ方が異なります・・・」とアドバイスをしています。そのような「コツ」は、「科学」であり「アート」の領域でもあると私は考えています。


AMリサーチに関して⑥AM下肢長検査(121号掲載)

アクティベータ・メソッド(AM)で最初に注目されるのは、器具によるアジャストメントです。AMといえば「アクティベータ器」というニュアンスで、一般の人やカイロプラクターでさえもそのように捉えている傾向があるようです。アクティベータ器は、長年の研究で人体に有効な振動器具として発展してきました。もちろん、アクティベータ器が繰り出す振動には有効な作用はありますが、臨床上大切なのは、どの部位に問題(サブラクセーション)があり、どの部位に問題がないのかが判断できることだ、とAMを長年活用しているカイロプラクターは考えています。 

AMの本質を知らない臨床家は、恐らく症状のある部位にアクティベータ器を当ててアジャストすれば、症状が改善されるのではないかと短絡的に考えるかもしれません。実際にそのようなシンプルな方法で、効果はある程度引き出されると思います。しかしながら、AMの臨床的な価値は、「どこを、いつアジャストし、いつアジャストしないか」にあるとアクティベータの臨床家は考えています。カイロプラクターとして背骨を中心軸として、下から上へ、すなわち抗重力の関係性を考慮した治療哲学に基づいて、症状の有無に関わらず背骨の中心軸のバランスを最初に調整します。 

例え、肩関節関連の症状でも、まずは、背骨の中心軸を調整した上で肩関節などの関節系、筋肉系の機能異常の調整を行います。それは、枝葉である四肢バランスを調整しても、幹となる中心軸(背骨)のバランスを整えていないと、抗重力に関係した普段の生活に戻ることで、軸が乱れて、枝葉となる末端の四肢関節にも乱れが生じる可能性があるという考え方に基づいています。そして、中心軸(背骨)や四肢関節に関係するバランス異常、すなわち神経関節機能障害(サブラクセーション)を特定するのが下肢長検査です。下肢長検査に関連する歴史は以前にもご紹介させていただきましたが、半世紀に渡っていくつかの研究論文が発表されています。 

その中でも客観的に分かりやすく示された下肢長検査法の研究データがあります。「Dewitt JK, Osterbauer PJ, Stelmach GE, Fuhr AW. アイソレーションテストによって生じた下肢長変化の視電計計測。JMPT 1994; 7(8):530-8」この研究では、靴にセンサーを取り付けて、計測器で靴の動きを記録するというものです。頸椎部のアイソレーションテストで被験者に頸椎を伸展してもらい、靴の動きを記録します。頸椎部に問題がない場合は、左右の靴の動きの波形はほぼ同じになりますが、頸椎部に問題がある場合、左右の靴の動きの波形にズレが生じます。この時、靴には手を触れていませんので、客観的に靴の移動、すなわち下肢長が変化した様子が示されます。 

臨床現場において、AMを活用して結果を出している臨床家にとって、下肢長検査法の反応は当たり前のこととして使っていますが、AMを知らない臨床家にとっては、このような科学的研究データは大切な信頼指標になるかもしれません。 


AMリサーチに関して⑤アクティベータ器による骨粗鬆症と安全性(120号掲載)

カイロプラクティックによる徒手療法の安全性は昔から注目されるテーマです。日本国内においてもカイロプラクティックの法制化で議論されるのは安全性です。カイロプラクティックアジャストメント(徒手矯正)は様々な手法がありますが、関節を手技で操作して素早い刺激を関節に加えるカイロプラクティックアジャストメントに比べて、アクティベータ器を使用したアジャストメントは安全性が高いことは臨床的にも明らかです。徒手矯正によって引き起こされる医療過誤で注意を必要とされる病気の一つに骨粗鬆症があります。骨粗鬆症の程度にもよりますが、胸部への強い徒手矯正によって肋骨骨折を生じさせる危険性があります。 

もしも、骨粗鬆症の患者にアクティベータ器によってアジャストメント(振動刺激)を行った場合、骨折を生じさせる確率はどれくらいでしょうか?私が知る限りではそのような事例は聞いたことがありません。今回ご紹介させていただく研究論文は、危険性というよりも、アクティベータ器による骨粗鬆症への振動刺激がプラスの効果を発揮させるということを示した画期的な研究です。この研究論文は2017年11月に発表されました。研究はA.López-Herradón、R. Fujikawaらによって、スペインのマドリードカイロプラクティックカレッジの協力で行われました。研究テーマは、『卵巣切除ラットの骨と骨格筋に対するカイロプラクティックマニピュレーションの影響』です。 

動物実験ではラットが使用され、一つ目のグループは卵巣を切除したグループ(OVX)、二つ目のグループは偽手術をしたグループ(Sh)に分けました。卵巣摘出(OVX)モデルラットは骨粗鬆症の実験モデルとして最も汎用されています。卵巣摘出モデルは、エストロゲン欠乏により代謝回転が亢進し、長管骨の骨端部や椎体の海綿骨が顕著に減少することが知られています。偽手術のラットと卵巣摘出のラットのグループは、さらに徒手矯正を行わないグループとアクティベータ器5による徒手矯正のグループに分けられました。徒手矯正のグループのラットはアクティベータ器5を使い振動刺激の強度の設定は1レベルで行われました。矯正部位は脛骨結節で左右の後肢で行われました。右後肢は実際に調整を行い、左後肢は空打ち(空気中で調整)によるニセの調整を行い、軽く脛骨結節に触れるだけでした。 

実験開始から10週間後に卵巣摘出のラットで骨粗鬆症が確認されてから、アクティベータ器5による徒手矯正が開始され6週間で週に3回繰り返されました。施術を完了してからラットの骨量を測定しました。さらにCTを使用して、各グループの長骨のいくつかの骨梁および皮質骨パラメーターを評価しました。結論的にアクティベータ器5のカイロプラクティック・マニピュレーションによる骨の改善は、卵巣摘出 (OVX) ラットにおける大腿四頭筋および前脛骨筋における MGF (機械成長因子) 発現の増加と関連していました。これらの研究成果は、骨格筋を標的としたアクティベータ器によるアジャストメント(振動刺激)(カイロプラクティック・マニピュレーション)が少なくとも部分的に骨粗鬆症を改善できるという概念を支持しています。つまり、それは、骨粗鬆症の患者にプラスの効果を発揮する可能性があるということです。 


AMリサーチに関して④(119号掲載)

スコット・ホルドマンDC、 MD、PhDが示したカイロプラクティック研究のための4つの評価基準で、前回は基準2、基準3をご紹介しました。最後の基準4では、「調整によってもたらされる神経系への影響が、異常な臓器機能、組織病理または症状複合体に有益な影響を示さなければならない」と述べています。今回はこの基準に関連するリサーチを一つご紹介させていただきます。この研究は2005年、世界カイロプラクティック連合リサーチ部門で最優秀賞を受賞しました。論文は「脊椎マニピュレーションは、ラットにおける腰椎椎間孔炎症後の疼痛および痛覚過敏を減少させる」というタイトルで2006年にJMPTに掲載されました。

本研究ではラットの腰椎椎間孔に直接炎症を誘発するように化学的に作り出し、機械的アロディニア、熱性疼痛過敏、感覚神経の過剰興奮を生じさせました。調査はその手術後24時間後に開始され、2週間で10回の一連の調整は7日間連続と1日おきに適用されました。ラットの痛みの強弱をどのように評価するのだろうか?と疑問に思うかもしれません。本研究を担当したソン教授は、現在、パーカーカイロプラクティック大学の研究所長を務めています。以前は博士研究員としてエール大学医学部で麻酔科学と神経生物学の分野で研究を行なっていた経験もあり、動物実験に関する痛みの科学的評価は定評があるようです。

ソン博士達は、施術前と施術後の機械的アロディニア、熱性疼痛過敏、感覚神経の過剰興奮の評価だけでなく、ヘマトキシリン・エオジン(HE)染色法を用いて後根神経節(DRG)の炎症症状を神経病理解析しました。結論として、これらの研究は、アクティベータ器による振動刺激が有意に重症度を減少させ、腰椎IVF炎症によって引き起こされる疼痛および痛覚過敏の持続時間を短縮することができるということを示しています。電気生理学的研究は、IVF炎症によって産生されたDRGニューロンの興奮性亢進がアクティベータ器の振動刺激によって有意に減少したことを示しました。ちなみに、各振動刺激は1回のみのスラストでした。

また、病理学的研究では、血管新生およびサティライト症の増加などのDRG炎症の症状は、アクティベータ器振動刺激後2~3週間で有意に減少したことが示されました。この研究は、10年後に進化して、2016年より綿密で実践的応用によるフォローアップ動物実験が行われました。論文は「ラットの脊髄にある内在的な抗炎症のサイトカイン・インターロイキン10を活性させることを通して、神経障害と術後の痛みへの脊柱マニピュレーションの緩和作用」というタイトルでJMPTに掲載されました。本研究の注目すべき結果は、脊髄神経の抗炎症であるインターロイキン‐10(IL‐10)が増加したことです。これは、アクティベータによる脊椎矯正が鎮痛に寄与した最初の実証研究になります。(その⑤に続く)


AMリサーチに関して③(118号掲載)

スコット・ホルドマンDC、 MD、PhDが示したカイロプラクティック研究のための4つの評価基準で、前回は基準1をご紹介しました。次の基準2では、「特定の施術プロセスはそれが適用される筋骨格系に特定の効果を発揮しなければならない」と述べられています。この基準を満たすアクティベータ関連の論文を3つほどご紹介させていただきます。一つ目は2000年に「メカニカルフォースの脊椎矯正は、筋電計による体幹筋力を増加させる」(Colloca CJ, Keller TS)というタイトルでJMPTに掲載されました。この論文では「アクティベータ器によるアジャストメントによって筋力を22%増加させた」と述べています。

二つ目は2002年の国際腰痛学会でポスタープレゼンテーションとして掲載された論文「脊椎マニピュレーションにおける傍脊柱筋の筋電図活動の減少」(Jim DeVocht PhD, Wally Schaeffer, DC)というタイトルで、「アクティベータ・アジャストメントは筋スパズムを軽減させ、電気生理学的変化を引き起こす・・・」と述べています。三つ目の論文は後向き調査の症例シリーズで、「自動車衝突後のカイロプラクティックケアを受けている患者における横方向頚椎カーブの変化」というタイトルで、アクティベータ器によるアジャストメントとストレッチエクササイズの指導によって、頚椎カーブの術前術後の変化は平均で6.4度増加したと報告されています。

次は基準3です。基準3では、「施術によって引き起こされる筋骨格の影響は、神経系に特定の影響を及ぼすことが示されなければならない」とされています。この基準を満たした研究は2000年に「外科手術中における腰仙部脊椎マニピュレーションに対する神経生理学的反応」というタイトルで、アクティベータ器によるアジャストメントの神経学的反応が記録され、その成果が発表されました。本研究で興味深かったのは、生体内と生体外のスラストの結果、混合神経根活動電位の振幅に差があることでした。

外科医との共同研究でおこなわれ、L4‐L5椎弓切除術の際に、脊椎を露出させた状態でL5乳頭突起にアクティベータ器で振動を加えた生体内の混合神経根記録と、通常に行われる皮膚の上から生体外の混合神経根記録の活動電位振幅を比較したところ、脊椎に直接コンタクトして振動刺激を加えるよりも、筋肉や脂肪組織などの軟部組織を介して振動刺激を加えた方が活動電位振幅の数値が高く示されていました。通常、神経系への振動刺激は、肥満体型の人よりも痩せ型の人の方が伝わりやすいのではないかと思われがちですが、この研究データではスラスト振動はむしろ肥満型の人の方が伝わりやすいことになります。臨床においても肥満体型の患者さんでも問題なくアクティベータの振動刺激が十分に伝わり、その結果として陽性反応は消失しており、この研究成果がそのことを裏付けてくれたと感じました。(その4に続く)


AMリサーチに関して②(117号掲載)

カイロプラクティック、あるいはその他の施術法を科学的に検証するために最低限必要なことは、何らかの方法で測定できること。そして、その測定には再現性があり、定量的に示されることなどが求められます。カイロプラクティックを科学するために、尽力を注いだ歴史に残る貢献者がいます。それはDCとMDの両方の学位を保持しているスコット・ホルドマンDC、 MD、 PhDです。彼は、1977年、当時カイロプラクティックの研究が乏しい時代に全体的な視座にたって、カイロプラクティックの研究論文を掲載するように依頼されました。

当時、彼は研究のための4つの評価基準を示してくれました。その4つの評価基準は現在でも使われています。一つ目の基準は、「特定の病理学的プロセス、臓器機能不全、または症状などへの複合した身体への治療において、制御された条件下で、特定の施術手順が一貫した臨床結果を示さなければならない」と述べています。この基準はカイロプラクティックのみならず医学領域においてもとても難しい基準だと思います。例えば、腰痛症状においても様々な種類の腰痛がありますし、研究の被験者を同じ生活環境の条件下で制御するのはとても困難です。

また、特定の施術手順を制御する場合、医学であれば同じ薬剤を投与することができますが、カイロプラクティックの場合、一貫した同じ施術(アジャストメント)を行うことが求められます。もしも、手で直接スラストする場合、同じ力、同じスピード、さらには同じ振動周波数で行うのはとても困難です。電動アクティベータ器でスラストする場合はボタンを押すだけでスラスト振動が繰り出され、スラスト自体においては一貫性がありますので、その点は制御できますが、アクティベータ器による調整でさえも、身体にコンタクトする人の手技によって異なります。

スラストのスピードや力は同じでもコンタクト部位、スラストの方向、最近ではコンタクト保持時間なども神経受容器へ及ぼす影響が異なることがわかってきていますので、コンタクトする施術者には一貫した技術が求められます。それを手で直接コンタクトしてアジャストする場合にはさらなる一貫した技術が求められるでしょう。特定の治療法で特定の症状に対して効果があるか否かをリサーチする場合、一貫性のある技術を制御するのは不可能に近いのかもしれません。

さらに、臨床現場において、単に肉体面だけでのアプローチで効果が引き出せる訳ではないことは、臨床経験を積めば積むほど分かってくると思います。技術だけでなく心の接し方次第で患者の心理面は変化しますし、強いてはそれが身体面へ波及する訳ですから、「モノ」ではなく「ヒト」をリサーチする難しさがここにあると思います。

このように、カイロプラクティックの施術法を科学的に検証することは非常に難しい課題だと言えるでしょう。しかしながら、アクティベータ・メソッド(AM)50年の歴史を振り返っても臨床現場においてAMを使っている施術者は増え続けているわけですから、帰納法的に考えれば、その臨床現場の広がりから鑑みると、効果を如実に表しているのではないでしょうか。

(その3へ続く)


AMリサーチに関して①(116号掲載)

アクティベーター・メソッド(AM)は、カイロプラクティックの業界では最も広く研究されているカイロプラクティックテクニックの1つであり、臨床試験において有効性が裏付けられた唯一の機器調整テクニックと言われています。有効性を裏付けられたという意味は、何百もの臨床および科学的査読(peer review)論文を発表し、主要な学術研究機関と協力して学術雑誌に掲載されているということです。学術誌の信頼度にもいろいろありますが、カイロプラクティック業界において、学術論文が学術誌に掲載されるということは大変な資金と労力が必要になると思います。

医学業界においては、大学病院や国が援助する研修施設などとタイアップして、研究者や臨床家、主には製薬会社の膨大な資金力によって高価な検査機械を使って学術研究機関で幅広く研究が行われます。そのような医学業界のリサーチに比べるとカイロプラクティック業界のリサーチは小規模ではありますが、ドクターファーは地道に学術研究を積み重ねて、カイロプラクティック業界に貢献し続けてきました。今日、AMが組織として発展してきた理由の一つがリサーチに力を注いできたという実績です。そこにはドクターファーの先見の明が際立ちます。

ドクターファーは臨床で多くの患者を診ていましたが、AMを世界規模に発展させるためには、学術研究が必須であるということを悟ったのでしょう。共同創始者のドクターリーが1980年代初頭に引退してから、研究の世界に足を踏み入れます。1987年、The National Institute of  Chiropractic Research (NICR) がドクターファーによって創設され、今日に至るまで、AM関連の論文が数百に及びました。

1985年、ドクターファーが最初に本格的な研究を行ったのは医学部の施設でした。カイロプラクティック業界としては初めてNIH(アメリカ国立衛生研究所)からの補助金を受けてアクティベーター器に関する研究が行われました。当時、医学界と敵対関係が浮き彫りにされていたカイロプラクティクが医学部で研究を行うというのも初めての試みでしたし、NIHからの補助金を得て研究を行うのもカイロ業界では初めてのことでした。

現代の人たちは、医学モデルを基本に医療というものを捉えています。そこには、科学的な研究が行われているかどうかで、その医療に信頼を寄せる傾向があります。「医学=科学的=信頼」という構図は長い歴史の中で築かれたものですが、「科学的=信頼」というのは、何を持って信頼なのかという観点は、議論の余地はたくさんあると思います。しかしながら、「カイロプラクティック=非科学的」にならないためのドクターファーの地道な実績に対しては尊敬の念を抱きます。カイロプラクティックには哲学、科学、アートという土台がありますが、科学の領域においてAMは多大な貢献をしているのではないかと思います。

(②へと続く)


器具によるアジャストメント⑤(115号掲載)

アクティベータ器の研究は、「スピード」、「固有振動数」、そして「伝達率(Transmissibility)」の研究へとさらに進化していくことになります。「Transmissibility」とは、機械工学でよく使われる用語ですが、「伝達率」、あるいは「力の移動性」というように訳されます。アクティベータ器の研究では刺激振動がどれだけ人体に伝達するのかを表しており、生体振動医療に関係する研究者達は、「伝達率」を重要なテーマとしており、アクティベータ器の改良においても人体にスムーズでクリーンな振動を伝えるための理想的な波形フォームを目指しました。そして、この伝達率に基づいた理想的な波形を含んだ振動器具として電動のアクティベータ器Vが誕生しました。

アクティベータ器Vは、人体へのスムーズな振動を伝える伝達率の改良に加えて、臨床における使いやすさも追求、今までのアクティベータ器とは異次元の矯正器具として生まれ変わりました。電動に加えてコードレスであること、人間工学に基づくグリップの持ちやすさや、調整ボタンの操作のしやすさが特徴的です。特に振動刺激を加えた時の患者側の体感は、従来の手動の器具とは異なる伝わり方を感じますし、術者側も器具内部で繰り出されるハンマー巧打による跳ね返りの衝撃はほとんど受けません。

電動のアクティベータ器Vも手動と同様に内部構造はハンマーで金床を叩く仕組みです。動作構造はリニアソレノイドという電磁力を利用した機能部品を使用しています。単に機能部品を使用するのではなく、理想的な波形フォームに近づけるために力の強さ、スピード、持続時間などをコンピュータ制御しています。

私は、パーマー大学の選択科目でアクティベータ・メソッドを履修した際にはアクティベータ器Iを経験し、開業してアクティベータ器Ⅱ、Ⅲ、そして、Ⅳを使い、現在ではVを使っています。手動器具が臨床的に効果がなかったわけではありませんが、やはり、電動のアクティベータ器Vは洗練され使いやすいと感じます。アジャストメントのスピード、周波数、伝達率と科学的な根拠に基づいた研究はカイロプラクティック・アジャストメントの本質を追求した科学的研究の一つであると思います。もしも、私が手による直接のアジャストメントにこだわり続けていたら、このようなアジャストメントの本質もわからないままでいたかもしれません。(次号に続く)


器具によるアジャストメント ④(114号掲載)

ドクターファーと脊椎生体力学の研究者達は、脊椎への矯正(アジャストメント)に「スピード」が大切だということから進化して、矯正による振動の周波数特性がさらに大切だということに注目しました。彼らはアクティベータ器の改良の過程で、脊椎の後方から前方への最適な共鳴振動数が30Hzから50Hzの間であることを突き止めました。その発見はとても重要な意味を持ちます。つまり、30Hz~50Hzの共鳴振動数で振動刺激を加えることで、多くの機械的受容器が活性化され、脊椎の可動性が増加するということが分かりました。この発見によって、アクティベータ器Ⅱが開発され、アクティベータ器Ⅲと続き、手動の器具としては理想形となるアクティベータ器Ⅳが完成しました。

「共鳴」、あるいは「共振」という用語は聞きなれないかもしれませんが、振子などの振動する物体に外から周期的な力を加えるとき、その振動数が物体の固有振動(数)に近いほど外力によるエネルギーが有効に吸収されて物体の振動が激しくなる現象です。

「共振」の作用を理解するために、音叉やバイオリンの現象が例として説明されます。振動数の等しい音叉を二つ並べておき、一つを鳴らすと他の一つも鳴り始めるのはその一例です。バイオリンなどの弦楽器では胴が弦の振動に共振することによって音のひびきを良くしています。また地震のとき、地震波の振動数が建物などの固有振動数と一致すると共振して激しく振動し、大きな損害を生ずることがあるので、耐震用に地震波の振動数に一致しない建物の研究もなされているといいます。

人体の脊椎、関節への矯正においては、アクティベータ器の振動域を最適な周波数に改良することで、より小さな力で骨の動きを大きく生じさせることができるわけです。また、機械的受容器は振動数に依存するといわれており、振動域の改善は関節周辺に散在するより多くの機械的受容器を集合的に刺激することができ、その結果、脊椎関節の可動性が増加することにつながります。分厚い筋肉や脂肪で覆われた部位の関節へのアジャストメントの際、アクティベータ器から繰り出される振動刺激が伝わらないのではないかと思われがちですが、しっかりと関節の固有受容器に振動刺激が行き届き治療効果が引き出されます。これは、この「共振現象」による作用だと臨床的にも感じることができます。(次号に続く)


器具によるアジャストメント ③(113号掲載)

ドクターファーはアクティベータ器の改良に当たって脊椎生体力学の研究者と共に、骨、関節を効率的に最小限の力で動かすには何が必要なのかという研究に着手しました。脊椎関節を手で直接行う矯正手技には関節の「ひねり」を加える手技もあります。アクティベータ器による矯正は、ほとんど関節に「ひねり」を加えることもなく、アクティベータ器の中で「パチッ」というハンマーが弾く音が鳴り、アクティベータ器が当てられた患部の圧力だけで矯正による強い衝撃力は感じません。関節が「ボキッ」と鳴る方が骨が動いたかのように感じるかもしれませんが、数少ないアジャストメントによる骨の動きの研究論文を比較すると、どちらの矯正も骨の動きにはさほど違いがないようです。

カイロプラクティックによる脊椎矯正の効果は、骨がA地点からB地点に移動するからではなく、骨、関節が矯正によって振動され、その関節周辺に散在する固有受容器が振動刺激を受けて活性化されることによる効果だと私は考えています。マニュアルによる矯正も器具による矯正も究極的には「振動刺激」による固有受容器への活性化による治療効果です。治療者はその本質をしっかりと理解した上で、関節の調整を行わなければ、治療を受ける患者にも誤解を生じさせることになるかもしれません。

「骨、関節を効率よく、患者への衝撃を最小に留めて振動させるにはどうしたら良いのか」という前提で考えると、「スピード」が鍵になります。物理学の運動エネルギーの方程式から考えても質量が小さくてもスピードが速ければ速いほど運動エネルギーの数値は高くなります。つまり、患者への衝撃の負担を最小に留めて効率的に骨、関節を振動させて、固有受容器を活性化させることができるわけです。頸椎にひねりを加えるマニュアルアジャストメントでは、患者によっては、最初は問題なくアジャストメントが行えても次のアジャストメントの際には、患者が反射的に構えて頸部に筋肉反射を生じさせ、調整がうまく行えないことがあります。

その点、アクティベータ器のアジャストメントは手によるマニュアルアジャストメントよりもスピードが約200倍も速いので筋肉反射が生じる前にアジャストメントが完了します。よって、患者にはほとんど負担を加えることなく、アジャストメントの目的をスムーズに完了させることができます。(次号に続く)


器具によるアジャストメント ②(112号掲載)

1960年代後半、ドクター・リーとドクター・ファーは拇指ターグル・アジャストメントに代わる矯正器具の開発にあたって、様々な器具を探し求めました。最終的に親知らずを割裂するために使う手術用の器具がアクティベータ器Ⅰの原型となりました。アクティベータ器Ⅰは、筒の中でバネ仕掛けの装置によってハンマーで鉄床を叩きつける仕組みになっています。ハンマーが鉄床を叩くことによる振動刺激の動的エネルギーがアジャストメントの重要な要素になります。

さまざまな試作品を改良し続けて、1976年にアクティベータ器Ⅰが初めて米国内で大量生産されました。そして、1978年9月26日にはアクティベータ器の特許を取得し、FDA(米国食品医療品局)に登録されました。この初代のアクティベータ器Ⅰは、その後、16年間標準的に使われ続けました。ちなみに筆者もパーマー大学留学中に、選択科目としてアクティベータ・メソッド(以下、AM)を履修し、アクティベータ器Ⅰを使用していた経験があります。当時の私は、手によるアジャストメントにこだわりがあり、サブラクセーションを特定する方法論としてAMに興味がありました。しかし、器具によるアジャストメントにはほとんど興味がありませんでした。そんな私が、今では日本にAMを啓蒙する代表者になるとは・・・今思うと固定観念が強かったと振り返ることができます。

当時、背骨をボキボキ鳴らすアジャストメントがカイロプラクティックの代名詞かのように受け止められた時代に実際にどれだけ骨が動いたかの研究はほとんどされていませんでした。ドクター・ファーは、その研究を1985年に国からの助成金を得てセントルイス大学の医科大学院で行いました。犬を使った動物実験では、犬の背骨に針金を刺しその背骨にアクティベータ器1でアジャストメントを行いました。実験結果は、犬の棘突起が最大で1.3mm移動し、矯正して1000分の19秒後に、わずか1mmの平行移動と0.5度の回旋が生じたと報告されています。その後、1994年に海外での人体に対する実験も行われ、アクティベータ器のアジャストメントで背骨が0.3~1.6mm動いたという報告もあります。骨がどれだけ動いたかの研究も大切ですが、さらに、骨を効率的に最小限の力で動かすには何が必要なのか、のちの研究で明らかになってきます。(次号に続く)


器具によるアジャストメント①(111号掲載)

器具によるアジャストメントの歴史を辿ると、カイロプラクティックで最初に器具によるアジャストメントを行なったのは、Thomas H. Storey,DCであるという記録があります。Dr. Storeyは、1901年にPalmer Schoolを卒業し、木製の小槌と棒の矯正器具で脊椎全体を矯正していたといわれています。アクティベータ器Ⅰの生産が始まりFDA(米国食品医療品局)に登録される以前に、いくつかの空気式や電動式の矯正器具が開発されており、さらには、現在のアクティベータ器の基本システムに関係するスプリング式やソレノイド式の技術革新もあったようです。

当時の器具によるアジャストメントの目的は「圧迫説」なのか「神経反射説」なのか定かではありませんでした。

アクティベータ・メソッドの共同創始者であるドクター・リーとドクター・ファーは、アクティベータ器が開発される前は、拇指ターグル・アジャストメントを行なっていました。カイロプラクターの多くが関節を捻るようなスラストを行う中で、直線的な関節への振動刺激で、神経反射を介して治療効果を引き出していたことが伺えます。二人のドクターはそのスラストを多くの患者に繰り返し行うことで、自分たちの肘関節や拇指関節の障害に悩まされていました。そして、その問題を解決するために矯正器具の開発に着手しました。

当初は肉体疲労の軽減を目的に器具へのアジャストメントに切り替えたわけですが、結果的にはアジャストメントの方向やスラストの速度や力などが、手での直接矯正よりもより容易にコントロールできることが分かったといわれています。器具によるスラストは、一見して簡単そうに見えますが、ターゲットとなるコンタクトポイントやその周辺の軟部組織への押圧はどれ位なのか、あるいはコンタクトの角度はどれくらいがベストなのか、そこには熟練の技が必要になります。

同じ筆を持っていても、その筆を使いこなせる熟練度や感性の違いで、書の美しさが異なるように、器具を使いこなせるだけの手の熟練が必要になるのです。恐らく二人のドクターは、拇指ターグル・アジャストメントで多くの成果を出していたので、どこの部位に、どの方向で、どれくらいの圧でスラストを加えれば結果がでるのかということを長年の臨床経験で培っていたのだと思います。(次号に続く)


下から診るのか、上から診るのか③(110号掲載)

先号の①ではバイオメカニカル的な観点、②では神経学的な観点からAMの「下」から診て調整を行う根拠の説明をさせていただきました。今回は、「生命エネルギー学的な観点」から考察させていただきます。B.J. パーマーの哲学の「Above Down Inside Out」、(上から下へ、内から外へ)を信奉しているカイロプラクターは上部頸椎だけをアジャストメントします。その基本的な理由は、主に神経学的な「圧迫説」に基づいています。ホースが挟まれて水の流れが悪くなるように、上部頚椎がズレると神経が圧迫され、神経エネルギーの伝達が悪くなり様々な症状につながるという仮説に基づいています。

「圧迫説」がどれだけ信憑性があるかは差し置いて、上部頚椎が関連する領域には、生命維持全般に関わる大切な神経中枢や固有感覚受容器が多く存在しており、その部位へのアジャストメントによる振動刺激は、反射系全般をリセットする意味では神経学的な効果が得られると私は考えています。

足関節や膝関節痛の患者の場合、AMでは即効性があり、多くの症例で効果がその場で分かります。上部頸椎矯正だけの信奉者の考えでは、「上部頸椎だけをアジャストして、後は「イネイトに任せる」となるわけですが、足関節捻挫なども、AMの臨床でみられるような即効的な効果はあるのでしょうか。捻挫などによって明らかに足関節周辺の固有感覚受容器に神経機能障害がある場合、「イネイトに任せる」というよりも、必要な問題部位の機能を早期に調整した方が、本来の「イネイト」が最大限に発揮されるというのが私の臨床経験です。

さらに、生命エネルギー的な観点を神経学的な概念を織り交ぜて説明すると、神経エネルギーは上から下への遠心性(運動)だけでなく、下から上への救心性(感覚)も考慮しなくてはなりません。「Above Down Inside Out」、(上から下へ、内から外へ)と反対の定式は「Below Up Outside In」、(下から上へ、外から内へ)です。両方の定式のどちらが正論ということではありませんが、人間が様々な環境に適応していくためには両方の働きが大切です。「Above Down Inside Out」と「Below Up Outside In」の両方の定式がうまく調和してはじめて、「イネイト」が発揮されるということではないでしょうか?(次号に続く)


下から診るのか、上から診るのか②(109号掲載)

先号では、「バイオメカニカル的」な観点からAMの「下」から診て調整を行う根拠の説明をさせていただきました。「神経学的」な観点から説明するとさらに複雑になります。

もしも、バイオメカニカル的な観点で「線形的思考」を強調した場合、構造学的な左右非対称の変形やズレは重力に対するバランス調整において力学的に問題があるということになります。しかしながら、神経学的な観点を組み合わせて考えると、機械構造論的な「非対称」は、神経系のバランス調整によって補えるということになります。

近年、二足歩行のロボットの開発研究が進化しております。重力に逆らって二足歩行でバランスが取れるようにするためには、ロボットの関節に高度なセンサーが必要で重心位置を掴み、圧の加減を計算して制御しなくてはなりません。でこぼこ道、柔らかい砂浜など、「下」から加わる多様な路面性状圧に対して、スムーズに適応できるようにするためには、人間の脳と神経系全般に匹敵するセンサーと人工知能が必要になるのです。恐らく、構造学的に左右の足の長さが違うロボットでも、関節のセンサーや人工知能で制御すれば、その非対称な構造を補って、重力に逆らって二足歩行でバランスが取れるようにできるでしょう。

自然界は「非線形の世界観」に基づいて営まれております。自然の山や川が非対称なように、人も厳密には左右非対称的です。左右対称が正常で、左右非対称は異常だとする考えは不自然なのです。例えば、先天性股関節脱臼の患者で左右の下肢長差が10センチ以上ある患者でさえも、神経学的にバランスが保たれていれば機能的には問題がなくなり、痛みなどの症状がなくなることを臨床で多く経験しています。

重力に対するバランスというテーマになると、左右対称的な構造を重要視しがちですが、神経学的な観点を加えると、構造学的に非対称でも、重量に対して問題なくバランス調整ができる能力が人間には備わっているのです。人間がバランスを取りながらでこぼこ道や砂浜を歩けるのは、センサーとなる固有感覚受容器が、絶えず重力からの刺激を受けて自動制御を行なっているからです。末梢神経系と中枢神経系、あるいは救心性(感覚)と遠心性(運動)が複雑に連絡を取りながら絶えず自動調整が行われているのです。

AMで行う伏臥位の下肢長検査では、立位姿勢を想定して、立っているかのように足関節を背屈させ、軽く頭上方向への圧を足底から加えます。この一連の操作と刺激が、重力下での立位姿勢を脳に想起させると考えられています。

もしも、頭上方向への圧を加えて、陽性反応が示された場合、足関節や膝関節、骨盤のいずれかに関係する関節の固有感覚受容器に問題があるという前提で、「下」から検査を進めていきます。

人間は、神経学的な観点を加えると構造学的に非対称でも重量に対して問題なくバランス調整ができる能力が備わっているので、様々な観点からみていくとまた違った見方ができるので、非常に興味深いです。(次号に続く)


下から診るのか、上から診るのか①(108号掲載)

カイロプラクティックの哲学的議論の中で、「下から診るのか、上から診るのか」というテーマがあります。カイロプラクティックのアジャストメントの主な目的は、サブラクセーションの矯正です。サブラクセーションを調整してInnate Intelligence(先天的知力)を最大限に引き出すことを目的としています。

「上」から診ようが、「下」から診ようが、どちらからでもサブラクセーションを特定してアジャストメントすれば、後は自然治癒力に任せるという考え方で、施術を進めているカイロプラクターも少なくはないと思います。また、B.J.パーマーの哲学を信奉しているカイロプラクターは、「Above Down Inside Out」、(上から下へ、内から外へ)というカイロプラクターの間では有名な理論に基づいて、上部頸椎だけをアジャストメントするでしょう。

「下から診るのか、上から診るのか」というテーマに対して、3つの観点から説明する事ができます。一つ目は「バイオメカニカル的」な観点、二つ目は「神経学的」な観点、三つ目はカイロプラクティックで強調されているInnate Intelligence(先天的知力)を含む「生命エネルギー的」な観点です。バイオメカニカル的な観点では、構造や運動の「力学」、神経学的な観点では、「機能」や「働き」、生命エネルギー的な観点では「流れ」などが説明のポイントとなります。

AMにおける検査や矯正の手順は、「下」から「上」へと進めていきます。なぜ「下」からなのか、或いはなぜ「上」からなのか、それぞれに理由があります。AMに限らず、「下から診て調整する」というテクニックの基本的な理由は、バイオメカニカル的な理由が強いため、「重力」との関係性が主となります。二足歩行で生活している人間が、地球上で生活している以上、「重力」に逆らうことはできません。

例えば、家を建てる際には、まずは土台をしっかりと固め、骨組みを下から上へと積み上げていきます。下の土台が歪むと、上部構造にしわ寄せが生じるのは言うまでもありません。まだ生まれたばかりで歩くことができない乳幼児や寝たきりの人、或いは無重力状態の宇宙空間であれば、「下」から見る必要性はなくなります。しかし、ほとんどの人は、立ったり歩いたりと、重力に逆らい、バランスを取りながら生活をしています。故に、土台となるバランスが取れていないと、上のバランスも崩れるという考え方に基づいて「下」から調整を行います。(次号に続く)


「神経関節機能障害」特定のための「プレッシャーテスト」と「ストレステスト」(107号掲載)

アイソレーションテストによっては、主に脊柱領域の神経関節機能障害のセグメントの「部位」が特定されると次の神経関節機能障害の「方向」がさらに特定されます。その時にアイソレーションテストに加えて使われる検査法が二つあります。それは、「プレッシャーテスト」と「ストレステスト」です。この二つの検査法は、相反する検査法で「プレッシャーテスト」は「正常な方向」を特定し、「ストレステスト」は「異常な方向」を特定します。

アイソレーションテストで神経関節機能障害の部位が確認された後、次に椎骨の「変位」を特定します。このとき、便宜上「変位」という言葉を使っていますが、椎骨が位置的にズレているという意味ではありません。特定の椎骨の可動方向に対する神経生理学的な機能障害という意味です。アクティベータメソッドを初めて学ぶ受講者には、この概念をしっかりと理解していただけるように毎回努めています。もしも、アクティベータ器で脊椎関節の位置的なズレを構造的に治すなどと誤解されるとアクティベータ器に対する信頼が損なわれかねません。ある筋の情報では、美容目的に顔の歪みを矯正するためにアクティベータ器が使われていると聞きました。残念なことですが、アクティベータメソッドの正規の教育を受けずに本質的な理解もなくアクティベータ器を使っているのだと思われます。

アクティベータメソッドを含むカイロプラクティックのアジャストメント(矯正)が、椎骨をA地点からB地点に可動させることだといまだに信じている治療家も少なくはないかもしれません。初めてアクティベータメソッドセミナーを受講される先生方の間では、そのような考え方をもってアジャストメントを行うと考えている人も少なくないようです。でも、アクティベータメソッドのセミナーを継続することでその機械論の矛盾点を体験的に修得され、本質的な学びに変容していくようです。その機械論の矛盾点を理解してもらうために最初に役立つのが、前述した「プレッシャーテスト」と「ストレステスト」の説明です。この二つのテストを理解することで多くの受講者がその矛盾点に気づき、本質的なアジャストメントの意味を理解することができます。これはアクティベータメソッドに対する信頼というだけでなく、それぞれの患者さんとの信頼関係にも影響を及ぼす大切なテーマだと私は考えています。(次号につづく)


アイソレーションテスト(106号掲載)

AMセミナー受講者が下肢長検査法をマスターする際、ある程度の段階があります。最初の段階では、下肢長検査をする際の立ち位置、手の位置、手の運び方などのいわゆる「型」を修得します。「型」の修得ができた後、次は「反応を読み取る」修得へと進みます。「型」の修得だけで下肢長を判断すると、機械的に判断する傾向があるので、検査結果は「微妙に短い」とか「微妙に揃っている」などの答えが返ってくる傾向があります。

その一方で、熟練した「反応」を読み取ることができる施術者では、「反応がある」か「反応がない」か、すなわち「全か無か」の検査結果が返ってくる傾向があります。「反応」を読み取ることができるようになった人と、そうでない人の違いは何かと、教える立場で長年試行錯誤した結果、技術的なことよりもその行動を生じさせる潜在的な思考、思想の影響が強いということが見えてきました。

「反応」を読み取ることに苦労する人は、機械論的思考を強く信じている人が多い傾向があるようです。生体反応は感じなければならないのですが、理屈で考えるから、理屈通りの検査結果でしか得られない。例えば、「長さを計る」という機械論的な視点で診ようとすると、人間の骨格は微妙にしか「ズレ」ないだろうという思考が潜在的に働くので、下肢長検査の結果も微妙にしか変化しないということになり、その思考が、そのまま検査結果として現れます。

もしも、「反応」が示されるということを有機論的(生命論的)に考えると、「微妙な変化」ではなく、「明らかな変化」として示されます。たとえば、神経学的エラーの結果、筋肉などのトーン(緊張)が変わり、足関節、膝関節、股関節、骨盤、脊柱周辺の筋肉などの一連の連なりが有機的に変化する結果として「反応」が示されると想定することができます。

このような有機的な仮説に基づいて検査する場合と、機械論的な仮説で検査をする場合では、術者が指標とするアンテナが大幅に異なり、生体から読み取る情報も異なります。人間には本来高性能のセンサーが備えられています。その高性能のセンサーを活用した下肢長検査法ができるかどうかは、施術者が信じている治療哲学や生体反応に対する捉え方にかなり影響を及ぼしているようです。

これは、私が長年AMセミナーで指導させていただいた経験で学んだことです。とても重要なことなので、多くの治療者に学んでいただきたいと願っています。(次号に続く)

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