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松下 順彦DC,LCP,DPhCS,FICA



基本に戻って考える➁

先回は、基本に戻って「健康とはなにか」から「人体の調整を司る神経系」そして「神経系の機能不全を起こし健康を損ねるサブラクセーション」などについて述べました。今回はその続きです。

サブラクセーションの事実:

人体のすべての神経線維のうち18%のみが、その神経線維が圧迫された時に痛みを発生するように設計されています。82%の神経線維は、圧迫されても痛みを発生するようには設計されていません。このことは、あなたが気がついていなくても、あなたの体にサブラクセーションができている可能性があることを意味しています。

つまり、痛みを感じていないからといって、神経系に圧迫などの異常がない、すべて正常で健康であるとは限らないのです。

高血圧や糖尿病(高血中糖度)などの病気も、患者さんは痛みを感じません。つまり、自覚症状はありません。しかし、病気が進行し、悪化すると、身体各部に問題が生じて痛みなどを感じるようになります。糖尿病性坐骨神経痛などがその一例です。そうなった時は、末期の状態であることが少なくありません。

サブラクセーションも同様に必ず痛みや痺れといった自覚症状があるわけではありません。痛み以外の症状や機能不全、機能低下があっても、気がついていないことも少なくないのです。

痛みなどの症状が発症している、あるいは自覚症状がないにもかかわらず、脊柱機能不全であるサブラクセーションが脊柱上の椎骨に起こり、それが取り除かれずに放置されるとどうなるのでしょうか。

放置されたサブラクセーションは、時間の経過とともに退行性変性を起こし、脊柱機能不全はさらに深刻化します。この退行性変性の状態をカイロプラクティックではサブラクセーション退化と呼び、その程度によって第一段階から第四段階に分類しています(サブラクセーション退化四段階モデル)。その判定にはX線画像を分析して行います。

正常:Normal (Text Book Normal)

サブラクセーションがない脊柱は、側面像においては配列が滑らかな彎曲(頚椎側面像では前彎)に並び、骨質も充分で、椎骨の形状にも異常は認められない。また、周辺軟部組織の異常もなく、椎間版のスペースも充分に維持されている。

第一段階:Phase 1

第一段階は、0~20歳のとても若い時期に起こる。特徴としては、運動性(可動性)の異常がある、初期の軟部組織変化を認める、そして骨の構造的変性は見られない(不整列はある)などである。放置された期間(慢性度)によるが、アジャストメントによって数週間から数か月でほぼ正常に戻る。

第二段階:Phase 2

第二段階は、20~40歳の青・壮年期の成人が一般的である。第一段階の変化に加えて、繊維症、X線写真で初期の骨変化を認める。椎間板や関節軟骨の軽度の萎縮や骨棘など骨外郭の変化等が特徴である。治療に対する反応としては、著しい改善が見られるが、数年にわたる長期間のケアが必要である。退行性変性の進行を停止させることが第一目標であり、幾分かの退行性変性が回復する可能性もある。回復には1年半から2年半程度が必要となる。

第三段階:Phase 3

第三段階は、40~60歳の熟年期の成人が該当する。重大な退行性変性と再生の変化として、前部および後部運動構成単位における骨癒合が認められる。ケアの目的は、サブラクセーション退化の進行を緩め、遅らせることであり、生涯にわたるケアが必要である。

第四段階:Phase 4

第四段階は、60歳以上の老年期であり、第一~第三段階までのすべての変化に加えて、運動構成単位の完全癒合が見られる。この状況に至っては、問題となる部位の退行性変性を遅らせるためのケアを該当部位に加えることはできない。

このように、脊椎サブラクセーション退化は放置されると、症状の有無に関わらず時間の経過とともに進行・悪化し、特に椎間板の退行性変性に伴う萎縮は不可逆性疾患と考えられており回復・改善が困難であることから、予防および退行性変性の進行を防ぐことの重要性が指摘されています。

サブラクセーションが神経系の機能不全を引き起こし、それが身体各部の機能不全をもたらし健康を損ない、結果的に痛み・痺れを含むさまざまな不快な症状に苦しむことになるわけですから、その根幹となる原因のサブラクセーションを取り除くカイロプラクティックのケアが最重要であることは疑いようがありません。
ドイツのグットマン医師は、「生後約1か月の新生児1,000人を調べたところ、80%超の新生児の頚椎に出産時の外傷が認められた」と報告しています(Gutman, G. Blocked Atlantal Nerve Syndrome in Babies and Infants. Manuelle Medizine, 1987, pp5-10.)。

同様に、生後5日間の期間中の新生児1,250人の評価を行ったフリーマン医師(DO)の研究では、「90%が頚部と頭蓋骨部に出産時の外傷と牽引ストレスを被っており、10%は酷い損傷を被っていた」と報告しています( Frymann, V. Relation disturbances craniosacral mechanisms to symptomatology of the newborn: Study of 1,250 infants. JAOA. 1966. 65:1059-1075.)。

この出産時の外傷(トラウマ)が人生最初のサブラクセーションとなっている可能性があります。これらの新生児の脊椎サブラクセーション退化は第一段階ですが、放置すると発育・成長にも健康面にも悪影響を及ぼす可能性がありますし、時間の経過とともに退行性変性も進行する恐れがありますから、早期にカイロプラクティックのアジャストメントメントを受けて取り除くことが得策です。

それゆえに、医学書『Anatomico-Roentgenographic Studies of the Spine』の著者であるSyracuse Memorial HospitalのLee A. Hadley, M.D.は「サブラクセーションだけでも、誕生から生涯にわたってカイロプラクティックのケアを受けることの合理的な理由である」と指摘しています。

小児科医のLendon Smith, M.D.も「すべての新生児は首と脊柱の検査を受け、必要な場合はカイロプラクティックのアジャストメントメントを受けるべきである。このアイデアを受け入れることはそんなに困難ですか?」と述べています。

健康の回復・維持・増進のために、症状の有無に関わらず、新生児のころから定期的にカイロプラクティックの検査を受け、必要な時はアジャストメント(調整・矯正)を受けておくことの重要性をハッドレイ医師もスミス医師も認識しているのです。

椎骨の不整列(歪み・ズレ)によって神経系の機能に妨害が起こるサブラクセーションこそが、脊柱の歪み(不良姿勢)を引き起こし、その姿勢の変化が新たな神経系への負荷となり、さまざまな症状の原因・誘因となることが判明しています。それゆえに、その根本的な解決のためにサブラクセーションを取り除かなければいけません。

しかし、一般の人達は、強い痛みやひどい症状が出なければ「自分は健康である」と思っている場合がほとんどで、カイロプラクティックを受けに来院される人達ですら、大部分が腰痛などの「痛み」を訴えての受診であり、自分の脊柱にサブラクセーションが起こっていると自覚している人はほとんどいません。

それゆえにカイロプラクティックでは「サブラクセーション」を含むカイロプラクティック独自の健康観、つまりはカイロプラクティック哲学を患者にわかりやすく伝える「患者教育」が必要なのです。

神経外科医のJames Woddersee, M.D.は「椎骨サブラクセーションは脊柱上のすべての部位にあらゆる程度で起こりうる。不整列が脊髄に影響を与えない程度にわずかな場合でも、それは椎間孔を出てくる脊髄(末梢)神経に妨害を与えるだろう」と述べています。

サブラクセーションはカイロプラクターだけでなく、神経外科医の医師からも認められている理論ですから、サブラクセーションを見つけ(部位の特定)、それを分析し(リスティングの確定)、それを取り除く(アジャストメントメントの実施)ことができる唯一の専門職であるカイロプラクティック医師(D.C.)は、カイロプラクターとして自信を持ってサブラクセーションについて患者(および公共)に説明し、教育していく必要があるでしょう。


基本に戻って考える

カイロプラクティックとは何でしょうか? それは1895年9月18日にアメリカ合衆国アイオワ州ダベンポートにおいて、ダニエル・デービッド・パーマー(Daniel David Palmer)よって創始された医療専門職です。

医療専門職ということは、人の健康に関わる職業です。そこで、今回はその基本となる健康についておさらいしてみましょう。

健康とは

世界保健機関(WHO)は、「健康とは、肉体的、精神的そして社会的に良好な状態を指し、単に病気でない、症状がないということではない」と定めています。

ウエブスター辞典では、「健康とは全ての器官が常に100%機能している完全体の状態をさす」と記されています。

健康であるためには、単に自覚症状がないだけはなく、全ての器官が常に100%機能している状態ということですから、肉体的に最も重要なのは「機能の維持」ということです。

では、人体の機能はどうコントロールされているのでしょうか。

機能と神経系

グレイの解剖学では、「脳と神経系の役割は、体の全組織、器官及び系統の機能を調整し制御することにある」と記しています。

人体は約37兆2,000億個の細胞で構成され、それが目、鼻、歯、骨、胃、腎臓、皮膚などの組織、器官、臓器をつくっています。その複雑な人体のすべての機能のコントロールをつかさどる最も重要なものが神経系です。

健康には、まず身体の機能の維持が重要であり、その機能を制御しているのが神経系ですから、神経系が健康をつかさどっているといえるほどに中心的役割を担っているのです。つまり、神経が身体各部の機能を適切に制御できている状態が健康ということになります。

神経系の機能が正常 → 制御・調整が正常 → 身体各部の機能が正常 → 体全体の機能が正常 → 健康

したがって、神経の機能が障害されるということになれば、神経系の調整や制御が妨害され、その神経の支配する領域の組織、器官、臓器などの機能の制御や調整にも障害が起こります。機能に障害が起これば健康を損ない、不調・病気の原因となると言えます。

神経系の機能不全

先天性疾患や、脳梗塞、脊髄腫瘍といった中枢神経系に直接的に異常をきたした病気を例外として、一般的な病気や症状など、健康を損なう原因としての神経系の障害はなぜ起こるのでしょうか。

脳や脊髄といった中枢神経は、その重要性と脆弱性から頭蓋骨や脊椎など骨で囲まれ護られています。しかし、中枢神経の脊髄が末梢神経となって出てくる所、椎間孔という穴が上下2つの椎骨によって構成されているため、椎骨が不整列を起こすと椎間孔が狭くなり、また周辺軟部組織が変性し、神経根部で圧迫や牽引などの障害が起こり、それが神経の信号を妨害することにより神経の機能不全となります。

神経根部に関しては、「神経根(DRG)は末梢神経に比べ、はるかに感受性が強く、より圧迫による障害を受けやすい」(Pain. 1977)、「神経根の活動電位を半分にブロックするのに、10mmHgの圧で十分」(NIH. 1975)、「神経根の静脈流をブロックするのに、5~10mmHgで十分」(JMPT. 1992)など、以前から複数の医学研究論文によって、その脆弱性による問題点が報告されています。

脊椎サブラクセーションによる脊椎神経への軽微な圧迫で神経機能の60%が障害される。(コロラド大学の脊椎生態力学者、Chung Ha Suh博士)

神経組織に実験的に圧迫を加えると、細胞レベルで病理学的変性が見られた。それらには、ワーラー変性、軸索栄養障害や髄鞘神経線維の時々の消失などを含んでいた。(Spine. R.B. Delamarter医師)

神経網における過剰機能または機能減少ニューロンは、正常な神経伝達を妨げ、細胞、組織、臓器の恒常性の欠如の原因となる。(Academy of Pain Research. Dr. T.N. Lee)

カイロプラクティックは、脊髄と、それから分岐した神経の解剖学に焦点をおいている。悪い姿勢による僅かな脊柱の偏向(ズレ)ですら、神経と、その神経が担っている身体部位の機能を損なう。(Miriam Stoddard 医師)

命の円弧である頚部(首)のカーブ(前彎曲)を失うことは、脊髄を5~7cmも伸長させ、そして病理学的緊張を生み出し、身体を病的状態に至らしめる。(Alfred Breig 医師)

これらの報告などでも指摘されているように、神経への圧迫や牽引などが神経機能の障害の元であり、身体機能の異常、そして病気や症状の主要な原因となることが判明しています。

そして、健康を損ない不調や病気の原因となる神経の障害を起こす背骨の不整列をカイロプラクティックでは「サブラクセーション」と呼んでいます。

サブラクセーション(Subluxation)とは

サブラクセーションとは、脊柱上に起こった脊椎の不整列によって、神経根部や脳幹・延髄部などに圧迫やけん引等の障害が起こり、正常な神経機能の妨害となることで病気や症状の原因となりうると考えられている状態を示す言葉です。

サブラクセーションの診察・検査

サブラクセーションを見つけ出し、診断するには、単に背中を触診するだけではなく、以下の5項目を詳しく診察し検査をします。

I.運動病理学(Kinesiopathology):脊椎の正常な可動性が減少し、また正常な配列を失った状態を触診や視診で調べるもの。

II.神経病理学(Neuropathology):深部腱反射、触覚・痛覚検査、皮膚温度検査などで、神経系の機能不全を調べるもの。

III.筋肉病理学(Myopathology):筋力低下、筋過緊張などの、筋肉系統の異常を筋力テストや触診で調べるもの。

IV.組織病理学(Histopathology):椎間板、靭帯、関節包、結合組織などの炎症、腫脹、圧痛など、軟部組織の損傷や異常を調べるもの。

V.病態生理学(Pathophysiology):脊椎骨の、奇形、形成不全、骨折、腫瘍、骨棘などの退行性変性、その他の骨格の異常をX線検査で調べるもの。

カイロプラクティック医師(DC)は、健康を損なった原因を取り除くために、このような5項目の診察や検査を行い、サブラクセーションと呼ばれる脊椎機能不全の部位・方向・程度などを調べるのです。

サブラクセーションの起こる原因

カイロプラクティックの創始者DDパーマーは、サブラクセーションの起こる原因を1. トラウマ(Trauma: 外傷)、2. トキシン(Toxin: 毒・有害物質)、3. ソウト(Thought: 思考・自己暗示)の3つのTであるとしています。

トラウマは外傷であり、出産時の医師による首の牽引や交通事故などの大きな外力、スポーツでの転倒や他の選手との接触、仕事や家事での労働や反復して同じ動作・姿勢や作業を繰り返すなどの疲労性のもの、日常生活上の習慣、くせ、軽い転倒や打撲などが該当します。

トキシンは有害物質であり、きのこ、フグなどの毒や、大気汚染、水質汚染などの環境からの有害物質、細菌やウイルス等の有害微生物、食品添加物や化学調味料などの有害化学物質、環境ホルモン、そして医薬品(薬)の副作用などの毒性などが該当します。

ソウトは思考であり、心配事や精神的ストレスなどの精神的疲労、マイナス思考などの自己暗示、その他人間特有の神経性、精神性の負担などが該当します。

したがって、社会性の動物である人間ならば誰しもが上記の何らかの原因でサブラクセーションを起こしている可能性があり、放置すれば神経系の機能不全から身体各部の機能不全、そして症状や病気の発症とつながり健康を損ねることになります。

カイロプラクティックの独自性と効果

カイロプラクティック医師(DC)は、医師(MD)と同等の教育を受け、かつ脊椎解剖学、神経学、放射線学などをより深く学んだ脊柱と健康のドクターであり、脊椎サブラクセーションを見つけ、その状態を診断し、そして矯正して取り除くことができる唯一の医療専門職です。

サブラクセーションを矯正(アジャスト)して神経機能を正常化させるという独自の視点による診療の結果、「カイロプラクティックを受けている人は、そうでない人と比べて薬の使用が53%少ない」(JMPT. 2004)という調査結果がで出ています。

また、7年間にもわたる調査で、カイロプラクティック医師を主治医にしている患者は: ①60%入院が少ない、②59%入院日数が少ない、③62%外来手術が少ない、④85%医薬品代が少ない、という事実が判明しています。

神経の機能を妨げる圧迫・牽引を取り除くカイロプラクティックの効果はさまざまな研究で証明されているのです。

人体が生来持っている恒常性や自然治癒力といった健康維持の機能を根本的につかさどっている神経系の妨害・障害を起こすサブラクセーションを取り除くことは、病気や症状・不調の原因(Cause)を取り除くことです。

それゆえに、DCというのはDoctor of Chiropracticですが、Doctor of Causeとの意味があるとも言われるのです。

大切な健康を護るために、カイロプラクティック専門職における金科玉条である「サブラクセーションを見つけて素手によって取り除く」という原理原則を守らなければならないのです。


カイロプラクティックと腰痛

カイロプラクティックといえば「腰痛に効く治療法ですよね」などという印象が世間一般では持たれています。実際には、カイロプラクティックは腰痛の治療法などではなく、「損なわれた健康を体が自然に取り戻せるように、その不調の原因となっている神経機能障害を起こした脊椎サブラクセーションを取り除く医療体系」です。

しかし、一般の方は「症状とそれからの解放」に最も関心があるのが普通です。カイロプラクティックが何たるか、という患者教育は重要ですが、今回はカイロプラクティックが腰痛に効果があるのかどうかを患者に説明する際に助けとなる根拠をいくつか紹介しましょう。

慢性の腰背部痛にはカイロプラクティックが最適

医学誌『Spine』に2003年に掲載された論文で、オーストラリアの公立病院で115名の患者を対象とした臨床調査の結果が発表されています。この研究は、背部および腰部に慢性の痛みを訴える慢性脊柱痛症候群の患者に対して、西洋医学の薬、東洋医学の鍼、そしてカイロプラクティックの徒手脊椎矯正と、3種のアプローチの治療効果を9週間で比較したものです。

その結果は以下の通り:

立位での腰部前屈の可動域改善率は: カイロ:38%、鍼:2%、薬:4%。

短期間に痛みが消失したケースは: カイロ:32%、鍼:4.5%、薬:4.5%。

頚部の痛みに伴う就業不能の改善率は: カイロ:38%、鍼:16%、薬:8%。

症状消失まで回復した患者は: カイロ:27%、鍼:9.4%、薬は5%。

総合的健康度の改善率は: カイロ:47%、鍼灸:15%、薬:18%、であった。

また、薬の場合6.1%の患者に効果ではなく副作用が起こり、薬の服用を中止すると副作用は収まった。

(参考文献)Giles LGF, Muller R. Chronic spinal pain-a randomized clinical trial comparing medication, acupuncture, and spinal manipulation. Spine 2003;28:1490-1503.

1年後の残存障害

同じく『Spine』に2008年に掲載された研究論文では、労働者が腰に傷害を負った場合に、どのような医療を最初に受けたかによって1年後の慢性的な腰痛など労働障害の状態に差があるかを調査し比較しています。

その結果、一年後に障害が残存する患者の比率は:
1.カイロプラクティック:5%
2.プライマリーケア(西洋医学):12%
3.職業医学(Occupational Medicine):21%
4.その他:26%

(参考文献)Turner JA, Franklin G, et al. Early predictors of chronic work disability: a prospective, population-based study of workers with back injuries, Spine, 2008;33(25); 2809-18.

Consumer Reportsの調査

アメリカで最も信頼されている消費者団体の雑誌『Consumer Reports』が、腰痛の治療結果に関して14,000人の読者を対象に調査した結果を2009年5月号のコンシューマーリポート誌および、インターネット版に掲載しました。

「あなたの腰痛を誰が最も助けたか?」という問いに対して:
1.カイロプラクター(DC):59%
2.理学療法士(PT):55%
3.鍼灸師(LAc):53%
4.専門医(MD):44%
5.家庭医(MD):34%

という回答結果になっています。

(参考文献)https://www.consumerreports.org/media-room/press-releases/2009/04/consumer-reports-survey-hands-on-therapies-among-top-rated-treatments-for-back-pain/

米国の腰痛治療の新ガイドライン

健康情報「Harvard Health Publications」に2017年7月6日に掲載された、ハーバード大学医学部准教授のRobert H. Shmerling, MDの記事で、「腰痛の治療法は完全に変わるべきだ」と報告しています。

この報告は、150件超の疫学的研究をレビューした結果を基に作成された、The American College of Physiciansの新ガイドラインを紹介しているものです。

腰痛治療の新ガイドラインでは、以下の治療法を強く推奨しています。

A: 発症から12週間以内の急性・亜急性期の腰痛

①脊椎矯正 ②鍼灸 ③マッサージ ④温熱療法                                   

万一、上記の療法を試しても十分な効果がない場合は、非ステロイド抗炎症薬や筋弛緩剤を用いることが穏当なオプションとなるが、わずかな効果と副作用の可能性から、それらは第一の選択とはならない。

B: 12週間以上続く慢性的な腰痛

①脊椎矯正 ②鍼灸 ③理学療法 ④運動療法(バランスや深部体幹筋の強化、ストレッチ等を含む) ⑤ストレスを減少・対処するためのマインドフルネスを基調とした心理療法

太極拳やヨガ、進歩的リラクゼーションテクニックなども助けとなるアプローチの一例であるとしています。ただし、この推奨は「非定型的な腰痛」を対象とするものであり、大きな怪我、癌、感染、骨折などの重大な疾患による腰痛は医師(MD)の診療を必要とするします。

Shmerling准教授は、「私が医学生だった1980年代初頭には、酷い腰痛の患者は1週間やそれ以上の期間のベッドでの安静がしばしば推奨されていた。しかし今日では、それが腰痛を改善しないばかりか、しばしば悪化させることが研究の結果判明し、1日か2日程度は無理をせず、その後は徐々にストレッチや背中の筋肉強化などの運動を増やすことが勧められ、長期間の安静は良くないことが判明している」と指摘しています。

また、「非ステロイド抗炎症薬(アスピリンやイブプロフェンなど)や筋弛緩剤などの投薬は、腰背部痛の最初の治療の標準とされてきたが、2017年2月に公布された(新ガイドラインの)推奨によって、医師は腰痛へのアプローチを再度修正することを迫られている」と述べています。

1900年代の古い調査・研究でも、腰痛に対するカイロプラクティックの効果および費用対効果の高さが証明されたものが沢山あります。そして、近年の研究でもその傾向は変わりませんし、最新版の米国の腰痛治療のガイドラインでも、脊椎矯正が推奨されるなど、高く評価されています。

まあ、症状を対象とせず、原因を取り除くカイロプラクティックですから、効果があり、後遺症が少ない、そして安全で推奨されるのは当然といえば当然なのでしょうけどね。


医師の心からの言葉

医師(Medical Doctor)というのは大変な職業です。まず何よりも職責の重さが違います。診療科目にもよりますが、患者の生死に関わる瞬間に対応しなくてはなりませんし、患者の死に立ち会わなければならない場合もあります。また、当直勤務があったり、ドクターヘリなどで移動しながら診療をすることがあるなど、心身ともに緊張を強いられる場合も多々あります。そして、何より頭脳明晰でなければなれない職業の代表的なものです。

それゆえに、本当は医師になりたいが医学部に入れない程度の学力の者が、どうしてもDOCTORと呼ばれたくて、カイロプラクティック大学に入学し、DCの学位を取得し、神経学や内科学の専門医(ディプロメート)になって、「サブラクセーションを見つけて素手によってアジャストメントを施す」というカイロプラクティックを行わず、医師が薬を処方することを真似るかのようにビタミン剤のサプリメントを処方・販売し、Webサイトのドクター紹介ページに「白衣を着て首に聴診器を掛けてMDかと思われるような写真」を掲載している輩を少なからず見かけます。

しかし、それとは対照的に、本物の医師のなかには、西洋医学を最も高い医師という立場で臨床し、その体験から疑問を持ち、調査研究し、葛藤し、或いは辿り着いた「患者を救うための重大要素」・「医学の真実」などを発表・吐露している医師も少なからず存在します。今回は、そんな心ある医師の言葉を紹介します。

貴方の身体は自ら治す(癒す)ように設計されている。それを邪魔するのではなく、何故それを助けないのか。 Lorraine Day, M.D.

何故、患者は自分が病気だということで毒(薬)を呑むのだろう。もしそれを健康な人が呑んだら健康を損ねるようなモノだというのに。 L. F. Kebler, M.D.

全ての医薬品は、患者の状態を悪化そして複雑にする。 Robert Henderson, M.D.

多くの病気の原因は、治療の効果を出そうとして医師が迷信的に与えた有毒な薬である。 Charles E. Page, M.D.

医薬品は健康問題が何故存在するのかに対処することはほとんどなく、そしてその活動の副作用によって新たな健康問題をしばしば創る。 John Lee, M.D.

多くの名のある研究者や医師達が結論づけたのは、病気に対する答えは「より強力な薬を創ることではない」ということであり、しかし、それよりも身体の自然な防御ネットワークを強化することである。 Robert Rountree, M.D.

一般的な感染症による死亡や疾病は、抗生剤の遥か前に、ワクチンの遥か前に、さまざまな医学的介入の遥か前にすでに激減していた。 David Sobel, M.D. & Robert Ornstein, Ph.D.

西洋医学界は、医学の臨床面のみならず、教育や研究面までもが医薬品業界に買収されている。この国の学術施設は、自らが医薬品業界の有給職員に成り下がっている。私は、それを恥ずべきことと思う。 Arnold Seymour Relman, M.D.

医学部で教えられてきたことの50%は間違っている。 我々の問題は、どの50%なのかを我々が知らないことだ。 David Greer, M.D.

世界には概ね30,000の生物医学雑誌が存在するが、わずかに15%の医療行為のみが堅実な科学的根拠に基づいている。これはほんの一部分である、なぜなら医学雑誌の論文のわずか1%のみが科学的に誠実と思われるからだ。 David Eddy, M.D., Ph.D.

カイロプラクティックは、脊髄とそれから枝分かれした神経の解剖学に注視している。不良姿勢による脊柱のわずかな変位であっても、神経とそれが分布している身体部位の機能を阻害することができる。 Miriam Stoddard, M.D.

脊椎サブラクセーションは、脊柱の全ての部位に様々な程度で発生し得る。たとえその不正列が脊髄に影響を及ぼさない程度の僅かなものであっても、それは椎間孔をくぐり抜けてくる脊椎神経に妨害を起こしうる。 James Woddersee, M.D.

自然な頸椎のカーブを失うことは、頸椎に加わるストレスが漸進的に増すことを引き起こす。 Kenneth K. Hansraj, M.D.

頭部の重心線前方変位の姿勢は、最大で30ポンドの異常な負荷を頸椎に加え得る。これは全脊柱のアライメントを引き崩すことが可能である。 Rene Cailliet, M.D.

姿勢の強度と調整力は、運動におけるパフォーマンスと怪我の予防の必要不可欠なものだ。 Thomas Harris, M.D.

大多数の心臓病は、脊柱の機械的な問題が関与しており、冠状動脈の問題で心臓への血液供給が減少して起こったものではない。脊柱上の椎骨が不正列し可動性が失われると、神経系に影響を与え、それによって胸壁が緊張し始める。 Wayne Gallagher, M.D.

心臓発作は、脊柱における神経の機能不全により冠状動脈のスパズムが引き起こされることがしばしば原因となる。 Paul Sherwood, M.D.

カイロプラクティックを受けていない高齢者達と比較して、カイロプラクティックを受けている高齢者達は、総合的な健康状態が良く、慢性的な症状が少なく、病院や介護施設に入る日数が少なく、そして運動能力が優れていることが報告されている。 RAND STADY

神経系の障害は短時間で損傷を発生させる、それゆえに、予防的見地から出産後すぐにカイロプラクティックのケアを受け始めるべきである。 Arpad Denagy, M.D.

全ての新生児は、首と脊柱の検査を受け、必要に応じてカイロプラクティックのアジャストメントを受けるべきである。このアイデアは同意するのがそんなに困難ですか。 Lendon Smith, M.D.

いかがでしょうか。心ある医師達が、本当のことを言うと、それが都合の悪い業界、組織、個人などから嫌がらせや脅迫、或いは医師免許の剥奪などといった圧力を受けるリスクのある状況にも関わらず、医師としての良心から真実を訴えてくれているのです。

これらの医師達の言葉で分かったことは、薬が答えではないこと、西洋医学が必ずしも正しいものではないこと、製薬会社とその業界によって大学や研究所などが金銭的に結びついてしまい、その教育や研究に影響力が及び、根拠に基づく医療の根拠が信頼できない状況になっていること、脊柱と神経と疾病・機能不全の関係が認められ、新生児から高齢者に至るまでカイロプラクティックのケアが勧められることなどがあります。カイロプラクティックの独自性と存在価値がここでも認められ、評価されているのです。

カイロプラクティックを業として選んで良かったなぁと思うのは私だけでしょうか。


アメリカから見た日本のカイロ

アメリカはカイロプラクティックの発祥の地であり、最も多くのカイロプラクティック大学が存在し、西洋医学の医師(MD)と同じ第一専門職というカテゴリーに分類される学位「Doctor of Chiropractic」を取得したDCたちが臨床し、研究し、専門誌が発行される、カイロプラクティックの最も発展している国です。

そのカイロプラクティックの中心であるアメリカから我が祖国である日本のカイロプラクティックの状況を見ていると、おそらく日本国内にずっと暮らしていると見えない・気付かないかも知れないことが、少し見えて気が付くような気がします。

私は、日本では鍼師・灸師・柔道整復師の免許を所持し、カイロプラクティックは京都の若城弘治DC、大阪の小林忠正DCに師事して学ばせて頂き、松下鍼灸整骨院・カイロプラクティック研究所として開業、カイロプラクティックでは市内の放射線診療所に患者を紹介してX線写真を撮って頂いてガンステッド テクニックを臨床で用いていました。

そして、その治療所を廃業しアメリカにカイロプラクティック留学したのが1996年、私が34歳の時でした。 あれから26年と四半世紀が過ぎましたが、日本のカイロプラクティックと業界、その社会的地位などの状況は進展したのでしょうか。 

残念ながら進展しているようには感じられません。国際基準を掲げて日本に進出したRMITやマードックなどの撤退、その後DC学位を授与するとした東京カイロプラクティックカレッジも廃校、季刊マニピュレーション等の専門誌や業界新聞の廃刊など、教育や情報などの環境も厳しい状況になっているようです。教育水準を底上げしなければ法制化は困難になることは容易に想像がつくにも関わらずです。

では、その法制化はどうでしょうか。私が日本にいた頃には、既に私の大先輩のDCの先生方が当時の厚生省と交渉されて、何とか実現させようと尽力されていました。 今日でもカイロプラクティック制度化推進会議などで業界各団体の諸先生方が尽力をされているようですが、未だに「頸椎への危険な手技の明確化」などの問題で厚生労働省の助言を仰ぎながら協議を重ねているようです。1991年の厚生省健康政策局医事課・課長通知の頃と全く同じ状況ですね、一言で言ってしまえば。

1991年以降、頸椎に対する徒手操作(マニピュレーション)(高速低振幅のアジャストも含む)とストローク(脳梗塞)のリスクについては多くの研究・調査が行われ、医学誌に論文が掲載されています。その数例を紹介します。

医学誌「European Spine Journal」に2008年4月17日に掲載された、Dalla Lana School of Public Health / The University of Torontoの教授John David Cassidy, Ph.D., Dr.Med.Sc.らの“Risk of Vertebrobasilar Stroke and Chiropractic Care”という論文では、「カイロプラクターのオフィスを訪れた後に脳梗塞になるリスクと、医師のオフィスを訪れた後に脳梗塞になるリスクには、臨床的な差は見られなかった」と結論付けています。

医学誌「Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics」に2015年2月17日に掲載された、James M. Whedon, DC, MS, Yunjie Song, PhD, Todd A. Mackenzie, PhD, Reed B. Phillips, DC, PhD, Timothy G. Lukovits, MD, Jon D. Lurie, MD, MSらの“RISK OF S TROKE A FTER C HIROPRACTIC S PINAL MANIPULATION IN MEDICARE B BENEFICIARIES AGED 66 TO 99 YEARS W ITH NECK P AIN”という論文では、「頸部痛の66歳から99歳のメディケアB受益者の患者群において、椎骨脳底動脈での脳梗塞のリスクは極めて低い。カイロプラクターに受診した者とプライマリーケア医師に受診した者のリスクの差は僅かで、臨床的有意差ではない」と述べています。

医学誌「Cureus」2016年2月16日に掲載された、Penn State Hershey Medical Center の神経外科助教授Ephraim W. Church, MD, FAANS, FACS らの“Systematic Review and Meta-analysis of Chiropractic Care and Cervical Artery Dissection: No Evidence for Causation”という論文でも、「カイロプラクティックの矯正と頸椎動脈切開(損傷)との間に原因関係があるという説得力のある根拠は無い」と結論付けています。

医学誌「Canadian Medical Association Journal」に2001年10月2日に掲載された、Scott Haldeman S. DC, MD, PhD, FRCPらの“Arterial dissections following cervical manipulation: the chiropractic experience” という論文でも前述の論文と同様の結論が出ています。

アメリカでは脳梗塞の患者が一年間に約795,000人発生しています。(参照: www.strokecenter.org) アメリカの人口は約320,000,000人ですから、毎年アメリカ人の約402人に1人が脳梗塞を発症している訳です。 Dr. Haldemanらの論文では、カイロプラクターによる頸椎マニピュレーションが脳梗塞を引き起こす確率は5,850,000回に1回と報告しています。 単純に数字を比較すれば、ただ普通に生きていて脳梗塞を発症する確率と比べて、カイロプラクティックで脳梗塞を発症する確率は14,552分の1ということです。

医学誌「Journal of Electromyography and Kinesiology」に2012年10月に掲載された、University of Calgaryの教授Walter Herzog, PhDらの“Vertebral artery strains during high-speed, low amplitude cervical spinal manipulation”という論文でも、「人体標本を用いた試験によって脊柱矯正療法に伴う椎骨動脈伸張は重大な損傷にはならないことが判明した」と指摘しています。

医学誌「Stroke」に2014年10月7日に掲載された、Loyola University Chicago Stritch School of Medicineの神経学教授José Biller, MD, FACP, FAAN, FANA, FAHAらの“Cervical Arterial Dissections and Association With Cervical Manipulative Therapy”A Statement for Healthcare Professionals From the American Heart Association / American Stroke Associationという論文では、「頸椎矯正の前後で椎骨動脈の損傷に大きな差が見られないことから、脊椎矯正が頸動脈損傷の原因という主張を立証するには現在の生体力学的な根拠では不十分である」と述べています。

医学誌「Chiropractic and Manual Therapies」に2015年6月16日に掲載された、Optum, 

Health SolutionsのDirector for Clinical Policyを務めるThomas M. Kosloff, DC, MPHらの“Chiropractic care and the risk of vertebrobasilar stroke: results of a case-control study in U.S. commercial and Medicare Advantage populations”という論文で、「我々は、椎骨脳底動脈での脳梗塞のリスクとカイロプラクティックのケアを受けることとの間に重大な関連性が無いことを認めた。 我々は、マニピュレーションが椎骨脳底動脈での脳梗塞の原因の可能性はほとんど無いと結論する」としています。

こういった医師や医学博士らによる医学的・科学的な研究論文によって、日本の整形外科医らによる「頸椎への危険な手技」という指摘の中で、「頸椎へのカイロプラクティックが椎骨脳底動脈に損傷を与え脳梗塞の危険がある」という点においては根拠が無いことであると証明されているのではないでしょうか。

もちろん、「頸椎への危険な手技」によって発生するのは脳梗塞だけではなく、腕・手・指などの麻痺・痙攣・しびれ、めまい、頭痛なども可能性として考えられます。しかし、それらは程度の差こそあれ副反応として誰にでも、どんな手技ででも起こりえます。薬の副作用でも普通に起こりえるものです。現実に、正しい処方の薬による副作用で1年間に約10万6千人のアメリカ人が死亡しています。また、アメリカ人の死亡原因の第3位が医療ミス・医療過誤であるとも研究で判明しています。 

アメリカは「自由・平等」を尊ぶ国風ですから、カイロプラクティックとアメリカ医師会などとの訴訟でカイロプラクティックが最高裁判所で勝訴しています。そして、医師や博士にも真実を追求する心ある者がいて、西洋医学にとって都合の悪いことであっても研究が行われ、その論文が受け入れられて医学誌に掲載されています。

日本では、そういった西洋医学の問題・危険性について報告義務もなく統計すらとらず、研究論文も見受けられませんが、何故にカイロプラクティックには危険性を問題視するのでしょうか。

これは、私の個人的な妄想で根拠のないことですが、日本のカイロプラクティックの法制化が進展しないのは、「頸椎への危険な手技」などといった問題云々ではなく、もっと別のところに原因があるように思えてならないのです。 それは単なる口実ではないかと思えるのです。 「法制化を本気でやる気がない」のではないかということです。 

日本特有の団体や個人の既得権益や利権の取り合い、金も票田も持たないカイロプラクティックを支援する気のない政治家、天下りが出来る周辺産業の無いカイロプラクティックを、医学界を敵に回してまで助ける気など微塵もなく、任期を問題なく乗り切る為に時間潰しをするだけの役人といったような、国家・国民の利益も未来も考えないような有象無象が根本原因ではないかと思えて仕方がありません。 「やる気のない者」と協議をしても、暖簾に腕押し、糠に釘、豆腐に鎹と効果は期待できません。  

Jリーグが発足した年もワールドカップがありましたが、当時の試合を見た感想では、高校サッカーとプロサッカー位のレベルの差を感じたことが思い出されます。 それが今年の日本はドイツやスペインを破って16強入りと凄い進歩を見せています。 プロリーグの誕生でサッカーを本気でやる人が増えて層が厚くなりレベルが上がったのでしょう。

日本にはDCでなくてもカイロプラクティックを真剣に学び、カイロプラクティックを真摯に臨床する「やる気のある」カイロプラクターの先生が沢山いらっしゃることを知っています。

法制化の実現によって「やる気のある」カイロプラクターがもっと増えれば、日本のカイロプラクティックのレベルも更に向上するでしょう。

サッカーと同様に日本のカイロプラクティック界が発展し、世界をリードするようになる日が来ることを期待しています。 

私の妄想が杞憂であり、カイロプラクティックの法制化が実現することをアメリカから祈っています。


アメリカと言えばカイロプラクティック

アメリカと言えば世界の経済・ビジネスの中心ですが、成功しているビジネス パーソンなら粗100%読んでいる成功哲学のバイブル的な本に“THINK and GROW RICH”があります。 その著者はナポレオン ヒル(Napoleon Hill)氏であり、彼の息子のブレアー君が耳に障害を持って生まれ、専門医を含む複数の医師(MD)から「生涯、耳が聞こえることはない」と診断されて匙を投げられていましたが、カイロプラクターと出会って奇跡が起きました。 

そのカイロプラクターはB. J. Palmer, D.C., Ph.C.であり、ブレアー君が4歳になった頃にはカイロプラクティックによって彼の聴力は一般的な聴力の65%まで回復し、彼は小学校、中学校、高校そして西バージニア大学の三回生までの課程を履修するのに十分でした。 その後、補聴器の助けを得て一般的な聴力の範囲の100%を獲得し、正常な人生を取り戻しました。

ナポレオン ヒル氏はブレアー君がカイロプラクティックを受け始めるのと同時に、自身もカイロプラクティックを受け始め、85歳の時の記事では、「私は過去50年間カイロプラクティックを週1回定期的に受けてきた。 健康を回復するためではなく、病気にならないためだ。 そのお陰で私は私の半分位の年齢の者と同等の若さを保っている」と述べています。

彼はB. J. Palmer, D.C., Ph.C.をメンターとして健康管理を行い、Palmer School of Chiropracticとも特別な関係を築いていました。 そして、「私は50年間カイロプラクティックを賞賛している」と言っています。

また、アメリカと言えばファストフードが人気ですが、その代表的なチェーン店の一つにケンタッキー・フライド・チキンがあります。 その創設者はカーネル サンダース(Colonel Harland Sanders)氏であり、彼は新聞に掲載された“カーネル ハーランド サンダースはカイロプラクティックを賞賛”というインタビュー記事で、「私の健康は、過去53年間の毎週1から2回のカイロプラクティック アジャストメントに帰する」と述べるなど、カイロプラクティックで健康管理をしてきたことを明らかにし、その効果を絶賛しています。

そして、アメリカと言えば自動車大国として知られていますが、その自動車の流れ作業による大量生産方式を開発したのがFORD社です。 その創始者はヘンリー フォード(Henry Ford)氏であり、彼は発明王トーマス エジソン氏と懇意の仲であり、彼自身がカイロプラクティックに関して公に発言してはいませんが、彼の秘書が「ヘンリー フォード氏がカイロプラクティックを定期的に受けていた」と証言しています。

アメリカと言えば発明・特許で世界をリードしてますが、発明王と呼ばれているのは前述のトーマス エジソン(Thomas Alva Edison)氏です。 彼はB. J. Palmer, D.C., Ph.C.とも親交があり、彼の有名な言葉には次のものがあります。 「未来の医者は薬を使わずに、人間の骨格構造・食事・そして病気の原因と予防に注意を払うようになるだろう」。

アメリカと言えば映画などのエンターテイメントの中心でもありますが、かつてアメリカで人気だった映画には西部劇と呼ばれたカウボーイものがあり、そのスーパースターの代表がジョン ウェイン(John Wayne)(本名:マリオン ロバート モリソン:Marion Robert Morrison)です。 彼もカイロプラクティックを賞賛しており、「私はカイロプラクティックの治療をずっと受けている。 カイロプラクティックは素晴らしい専門職だ」と述べています。

このように、カイロプラクティックは世界の中心であるアメリカの各界を代表する偉人たちからも賞賛を受けています。 そのカイロプラクティックを正しく学び、受け継ぎ、護り、次世代へと伝えていきたいものです。

最後に、アメリカと言えばカイロプラクティックの発祥の地であり、B. J. Palmer, D.C., Ph.C.が設立した世界最古の国際的カイロプラクティック団体を起源に持つ国際カイロプラクターズ協会(ICA : International Chiropractors Association)があることが知られています。 私事ではありますが、私、松下は2022年7月25日付でDistinguished Fellow of the International Chiropractors Association の証明書の交付を受け、ICAのフェローに列せられました。 FICAの称号を持つ者として恥じない様、また、カイロプラクティック哲学専門医(DPhCS)である者としても、日本のカイロプラクター諸先生方に喜んで頂けるような情報や記事を提供して参りたいと考えております。 今後共宜しくお願い申し上げます。


カイロと医学の現状

カイロプラクティック界は創生期から多くの戦いを経験してきました。

それは医師や医師会からの嫉妬・誹謗中傷・訴訟などの攻撃であったり、組織的な差別と殲滅作戦などに対するものもあります。

その米国医師会に対して訴訟を起こし、勝利してカイロプラクティック界を救ったChester Wilk, DCは、今年の4月21日に永眠されました。ご冥福をお祈りいたします。

また、業界内部でも、学閥、ストレート対ミキサー、テクニックなどの違いによる争いが絶えません。まあ人間が3人いると派閥ができると言われていますから、人間の業なのかもしれません。

カイロプラクティック界の総本山・源泉であるパーマー カイロプラクティック大学ですら、二代目のBJ Palmer, DC, PhCが死去し、David Daniel Palmer, DC, PhCが三代目学長として就任して以来、CCEの問題などもあり、カリキュラムにNBCEの国家試験に準拠した内容を反映せざるをえず、カイロプラクティックの哲学を護りつつも西洋医学の教育も導入してきました。また、CCEによるストレート系の大学破壊工作として、教員に他の大学卒のDCを一定数採用する規定を設け、パーマー大学の教員にナショナル系(ミキサー系)が入ってくるようになりました。そして教員には博士号を取得している者を推奨するなど、カイロプラクティック色を薄める方策を導入してきました。

そういった影響もあって、2004年に当時パーマー大学の総長であったGuy Riekeman, DCがパーマー大学を去った後は、振り子が大きく反カイロ哲学に振れ、カイロプラクティックの哲学の称号LCP(認定医レベル)やDPhCS(専門医レベル)といった卒後教育が中止され、ホームカミングでの哲学系やテクニック系の講義が無くなるなど、もはやパーマー大学はカイロプラクティック界及び、その教育を牽引するリーダーではなくなったのではないかと危惧する声すら聞こえる惨状でした。しかし、カイロプラクティック界の親西洋医学派(媚西洋医学・西洋医学偏向派)が、その拠り所としていた根拠に基づく医療(Evidence-Based Medicine)が、どうやら根拠とするに足らない幻想であったことが徐々に判明してきたこともあるのか、パーマー大学ではカイロプラクティックの哲学がわずかずつではあるものの復権しつつあるようです。

以前にも紹介した権威ある科学誌・医学誌の編集長2人の告白を今一度見てみましょう。

論文が掲載された臨床研究、高名な医師の判断や権威のある医学的指針などを信頼することは、もう不可能である。The New England Journal of Medicineの編集長を20年以上務めた私が、ゆっくりと、嫌々ながら至ったこの結論に全く喜びを持てない。(Dr. Marcia Angell)

可能性として、出版された論文の半数は、単純に言って虚偽だろう。(Dr.Richard Horton, Editor in Chief of The Lancet)

それに加えて、今年2022年の3月16日にBritish Medical Journalに掲載された論文のタイトルは、The Illusion of Evidence Based Medicine (根拠に基づく医療の幻想)です。

この論文の著者は、Jon Jureidini, PhD, アデレード大学ロビンソン調査研究所・主任研究員、Leemon B. McHenry, PhD, カリフォルニア州立大学ノースリッジ校・哲学名誉教授の二人で、製薬企業との経済的関係が臨床試験にある現状が解消しない限り、根拠に基づく医療は幻想でしかない、と明言しています。

この2人の哲学博士は、同タイトルで、副題:臨床研究の信頼性の危機が露呈、という書籍をWakefield Pressから2020年に出版しています。

今年、3月26・27日に、Legion of Chiropractic Philosophers (LCP)というカイロプラクティックの哲学称号のクラスが、パーマー大学の講堂で催されました。このLCP称号課程の参加資格は、DC学位所持者の他は、MS(修士号)かPhD(博士号)所持者という大学院卒業レベルの者に限定されており、LCP称号取得後に専門医課程であるDPhCS(カイロプラクティック哲学専門医)の2年目に進むことが出来ます。また、今年の9月30日・10月1日には国際カイロプラクターズ協会(ICA)Annual Philosophy Conferenceが開催される予定になっており、カイロプラクティックの哲学が、カイロプラクティックの発祥の地であるアイオワ州ダベンポートに戻ってきた、という状況です。科学的に見える医学研究論文であっても、人が関わる以上は必ずバイアス(偏向)が生じる可能性があります。金の力で根拠が買われてしまっている今日、論文を読む際には「誰がこの研究費を出したのか?」を確認してからでなければ、その論文を信用するに足るかどうかを判断できません。まだ西洋医学、医師会の指針、専門医学会の指針、厚生労働省や政府の指針などを信じている人は、情報弱者であり、幻想を妄信していることになります。まずは、テレビを見ない、新聞を読まない、そして医学情報は根拠とその資金源の確認をすることです。

我々はカイロプラクターです。信用するに足らない根拠に基づく医療の幻想に見切りをつけ、カイロプラクティックの哲学に回帰して、人体が本来持っている自然治癒力を発揮させるために、イネイト・インテリジェンスの働きを妨げるサブラクセーションを見つけ、それをアジャストメントで取り除く科学と芸術に全知全能を傾注するべきでしょう。時代の潮流は、カイロプラクティックの原点、哲学への回帰になってきています。


カイロとスポーツ④(126号掲載)

今年、一年遅れで催された東京オリンピック・パラリンピックでは、前回のリオデジャネイロに引き続き2回連続で、北海道の後藤雅博DC,DACNBがカイロプラクターとして大会をサポートする医療チームの一員として活躍されました。

リオの大会では、米国選手団帯同医療チームの長をカイロプラクターが務めるなど、アスリートの体調管理、怪我の治療、怪我の予防、パフォーマンスの向上などにカイロプラクティックの優位性が認められてきています。

今回はアスリートの中からプロゴルファーを選んで、その体験談や逸話などを紹介します。

私のゲームにおいてカイロプラクティックは本当に有益だったと私は信じている。体がいかにバランスを失い、そしてそれをカイロプラクティックが救ってくれるのを私は実感した。フレデリック フンク ゴルフ PGA8勝

カイロプラクティック ケアは、私のスポーツ パフォーマンスと予防医学戦略の構成部品になっている。ノタ ベガイ Ⅲ ゴルフ PGA4勝

私の経験からわかった一つのことは、私がカイロプラクターに行き続ける必要性だ。カイロプラクティック ケアを受け続けることは私を負傷から守ってくれる。パドレイグ ハリントン ゴルフ PGA6勝 欧州ツアー15勝 日本1勝

また、2000年マスターズ優勝、PGA34勝のビジャイ シング、2003年マスターズ優勝、PGA8勝のマイケル リチャード ウイアー、PGA13勝、日本でも1勝しているデビッド ロバート デュバルといった超一流のプロゴルファーたちもカイロプラクティックを健康管理に利用していることで知られています。

日本のJLPGAプロゴルファーの中島真弓選手は、米国女子プロツアーに参戦のため、渡米中に紹介されて私のクリニックでケアを受けた後に日本に戻られ、2007年トーシン・アセットレディースカップで勝利しプロ初優勝を飾られました。2008年の廣済堂レディスゴルフカップで2位、2012年のANAプリンセスカップ優勝など活躍されています。

JLPGA10勝のレジェンドである藤井かすみ選手は、今年の第3回USシニア女子オープン大会に、出場120名中の僅か2名の日本人選手の1人として参加されました。それに先立ち一週間前に渡米してシカゴに滞在され、私のクリニックで5回ケアを受け、体を整えてから大会会場のあるコネチカット州に向かわれました。初診時は腰と左膝が10段階で8の激痛でしたが軽減し、最終日を上位3分の1の好成績で無事に乗り切る活躍をみせられました。

このコラムを読んでいるカイロプラクターの諸先生方も、私と同じようにアスリートのケアに携わった経験があり、カイロプラクティックの真価を体験されたことがおありのことと思います。

カイロプラクティックは、単に痛みなどの症状を軽減させる対症療法ではありません。

その人の生来持っている能力が存分に発揮できるように、機能が余すところなく働くように、体の統制の中心である神経系の妨害を取り除くために、脊椎サブラクセーションを素手でアジャストするものです。

その結果として恒常性が機能し、怪我などの損傷も順調に回復し、痛みなども軽減・消失し、体調改善、運動能力も最大に発揮できる体に戻るのです。

腰痛にカイロプラクティックが有効といった類の研究だけでなく、身体機能改善を裏付ける研究結果も報告されています。

カイロプラクティックのケアは2週間で最大16.7%運動パフォーマンスを向上させる。サブラクセーション フリーのアスリートは、反応が早い、統制が優れている、精密な動作の実行において正確性と精度が良い、など総合すると全体として優れたアスリートである。The Journal of Chiropractic Research and Clinical Investigation, 1991

何故、アスリートたちがカイロプラクティックを選ぶのか、その理由がよく分かりますね。


カイロとスポーツ③(125号掲載)

カイロプラクティックが人体の機能の調整を司る神経系の障害となるサブラクセーションを取り除くことで、身体機能が100%働き、持てる能力をフルに発揮できる健康な状態を回復・維持する一助となることは、今日ではプロや国際レベルのアスリートたちの間では常識となっています。

今回も、超一流のアスリートたちのカイロプラクティックに対するコメントを紹介します。

サブラクセーションは貴方の脊柱と神経系を駄目にすることができる。これは貴方のスピードとスタミナを損なう。私は全ての人たちに心からカイロプラクティックのサービスを進めます。マイク タイソン ボクシング ヘビー級チャンピオン

カイロプラクティックは私の鍛錬と日々の生活における基礎である。何故なら健康は私の最も大切な資産だから。リガン マチャド  ブラジリアン柔術 8段師範

カイロプラクティックはパフォーマンスを自然に高めることを助け、痛みがないことでアスリートが勝利することを促してくれる。トーニャ ナイト ボディービル ミス インターナショナル

PGAツアーの期間中も期間外も、定期的なアジャストメントメントは私の所定の日課の一部であり、私の身体機能を最善に保ってくれる。ザック ジョンソン ゴルフ 2007年マスターズ優勝 PGA12勝

私はカイロプラクティックが、私を柔軟で無痛の状態に保ってくれ、それによって私は最高レベルの能力発揮ができることを発見しました。カイロプラクティックの恩恵は、私のゴルフスイングの向上、私の体への緊張やストレスを軽減、そして私をより生産的なゴルファーにしてくれることです。それはLPGAツアーでとてもよく起こる、他の関連するケガの予防の助けになっていると私は認識しています。バーバラ ブンコウスキー LPGA プロゴルファー

2019年のUSオープン優勝のゲーリー ウッドランドは、2020年に腰股関節部を傷めてしまい、痛みのために戦列を離れざるを得ませんでした。そこで彼はカイロプラクティックを回復とコンディショニング計画に導入しました。PGAツアーに復帰しホールアウト後のインタビューで彼はこう応えています。

「私は痛みが無くなって約1ヶ月になり、良い調子だと感じ始めています。私のスピードも戻り、これまで長い間打てなかったような打球も、打てるようになりました。」

このように、ボクシング、格闘技、ボディビル、ゴルフ等のトップ選手がカイロプラクティックの真価を公言しています。

また、様々な医学誌に掲載された研究論文でも、カイロプラクティックのアスリートに有用な効果があることを証明しています。

カイロプラクティックを受けていない群の柔道選手と比べ、カイロプラクティックを受けた群の柔道選手は握力の顕著な向上が見られた。 Journal of Manipulative and Physiological Therapeutics

一回のカイロプラクティックのセッションで、エリートのテコンドー選手の筋力が向上した。 European Journal of Applied Physiology

是非、日本のアスリートにもカイロプラクティックを受けてもらいたいですね。


カイロとスポーツ②(124号掲載)

カイロプラクティックが、人体の機能の調整を司る神経系の障害となるサブラクセーションを取り除くことで、身体機能が100%働き、持てる能力をフルに発揮できる健康な状態を回復・維持する一助となることは、今日ではプロや国際レベルのアスリートたちの間では常識となっています。

今回も、超一流のアスリートたちのカイロプラクティックに対するコメントを紹介します。

フルタイムの競技者であるということは、ケガのリスクが増えることを意味する。このレベル(オリンピック)の競技会では、我々はケガの回復を含め全身のケアを確実にする必要がある。スポーツ医学は全てのダメージを最小限にする上で重要な役割を果たしている、それで私はカイロプラクターに定期的に通っている。ジャスティン ガトリン

カイロプラクティック ケアは、私を最高の状態に保つ上で重要な位置を占めており、それによって私は最高水準の競技が出来るのです。ペルディタ フェリシエン

カイロプラクティックの利益がなかったなら、私は今日まで(メジャーリガーとして)活躍し続けることは出来なかったと思う。ジョー モーガン

カイロプラクティックを受けて来なかったら、私はシーズンを通して継続してプレーすることは出来なかっただろう。ジョニー デーモン

脊柱は生命線だ。多くの人たちがカイロプラクターのところに行くべきだが、しかし彼らはそれを知らない。ジャック ラレーン

カイロプラクティックは私が負傷しないでいられることを助けてくれる。それは私が競技者として活躍できる秘訣の半分を占めている。リー ラブラダ

私は十代の頃からカイロプラクティックを受けています。それは私がプロのアスリートになり6つの世界チャンピオンを獲得することを導き、私の人生を変えています。ケン シャムロック

カイロプラクティックなしには私はチャンピオンになれなかったと思う。パール パディン

カイロプラクティック ケアは私のトレーニング プログラムにおいて必須のものでした。キャシー ターナー

私はずっとカイロプラクティックの支持者です。問題が起こった場合、ドクター オブ カイロプラクティックの所にいくまで解決しないから。デレック パーラ

私は少なくとも週に2回のカイロプラクティックを利用することを基本として据えるように明確に努めてきました。それが、私がより高いレベルで競技する助けとなっていると断言できます。エミット スミス

私は十四歳からカイロプラクティックを受け続けており、それが、私がNFL(米プロ フットボール リーグ)に入ることが出来た唯一の理由です。スティーブ ウェザーフォード

ドクター バン バイゼン(カイロプラクター)は私のチームの重要なメンバーであり、そして彼のケア(カイロプラクティック)に感謝します。 私の長年の夢であったマスターズ トーナメント優勝が実現したのですから。ジョーダン スピース

この様に、陸上、野球、ボディビル、格闘技、ボクシング、アイス スケート、アメリカンフットボール、ゴルフ等のトップ選手がカイロプラクティックの真価を公言しています。


カイロとスポーツ①(123号掲載)

カイロプラクティックが人体の機能の調整を司る神経系の障害となるサブラクセーションを取り除くことで、身体機能が100%働き、持てる能力をフルに発揮できる健康な状態を回復・維持する一助となることは、今日ではプロや国際レベルのアスリートたちの間では常識となっています。

運動生理学者のセアン アトキンス博士は「少なく見積もっても世界クラスのアスリートの90%以上が、パフォーマンス向上や怪我の予防の目的で定期的にカイロプラクティックを受けている」と述べています。

今回は、超一流のアスリートたちのカイロプラクティックに対するコメントを紹介します。

【マイケル ジョーダン】

私はカイロプラクターに通い始めるまで、どれほどまで向上するのか知りませんでした。 カイロプラクティックを受けだして以来、私は精神的にも肉体的にも跳び踊るほどに向上しました。

【タイガー ウッズ】

思い出せる限りの昔から私はカイロプラクターに通い続けています。それは私にとってスイングの練習をするのと同じ位に、私のトレーニングにおいて重要なのです。

【ウサイン ボルト】

私は常に金メダルを勝ち得ている訳ではない、しかし私が勝つ時は、私はカイロプラクティックのアジャスト(矯正)を先ず受けている。健康を維持しよう、私の友よ。

【ビーナス ウイリアムズ】

カイロプラクティックは、私が試合で戦い続けるのに必要な柔軟性を与えてくれる。

【アーノルド シュワルツェネッガー】

ボディービルダーやフィットネス系の人々は、健康や体形を維持する為に、とても頻繁にカイロプラクティックを利用しています。 怪我をする前にカイロプラクターに通うことがより良いことを私は知っています。 私たち、世界のフィットネスと世界のカイロプラクターはパーフェクトなチームです。

【イベンダー ホリフィールド】

私はリングに上がる前にアジャストメント(カイロの調整)を受けなくてはいけない。 私はカイロプラクティックを信じている。 私は週3回カイロプラクターに通うことで私の競技能力の助けになることを発見したのだ。

【トム ブレイディ】

カイロプラクティックは貴方を凄く改善させてくれるよ。 私はクリニックを歩いて出る時、私自身の背が3インチは高くなったように感じる。 私はカイロプラクターに通っている限り、ゲームで1歩前に進んでいるように感じるんだ。

【ダン オブライエン】

カイロプラクティックはランニングにとって必須といえるものである。 もし私がその価値の比率を付けるなら、定期的なカイロプラクティックによって、競技能力が8~10%向上しているということができるだろう。

【ジョー モンタナ】

私はカイロプラクターに通っており、彼は本当によく私を助けてくれました。 カイロプラクティックは私の試合の大きな部分を占めています。

【ジェリー ライス】

私は試合に出場し続けるために様々なことをしてきましたが、私がカイロプラクターに定期的に通うことが何よりも最も重要なことでした。

この様に、バスケットボール、ゴルフ、陸上、テニス、ボディビル、ボクシング、アメリカンフットボール等のトップ選手がカイロプラクティックの真価を公言しています。


カイロと免疫機能(122号掲載)

カイロプラクティックが、人体の免疫機能の正常化に有益であることは、以前から知られています。国際カイロプラクターズ協会(ICA)は、そのWebサイト上に関連情報を掲載しています。

その一方で、米国カイロプラクティック協会(ACA)や世界カイロプラクティック連盟(WFC)など、ミキサー系の団体は「カイロプラクティックが免疫系に有効とする信頼に足る研究は存在しない」という旨の発言をし、その西洋医学偏向かつ反カイロプラクティック的な志向を鮮明にしています。

特にWFCはWHO(世界保健機構)の認定機関ですが、そのWHOが資金提供を受けている中国や、ビル&メリンダ・ゲイツ財団、製薬企業等の強い影響を受けており、米国がWHOへの資金提供を止め、WHOから撤退する動きを見せるなど、世界を代表する機関としての資質(中立性)が根底から疑問視される事態に陥っています。

同様に、WFCやACA等の団体も、カイロプラクティック専門職を内部分裂から崩壊へと導き、オステオパシー専門職が辿った「西洋医学同化」の道へ進ませるために、製薬企業団体から様々な方法で、経済的影響が与えられていることを危惧するカイロプラクターも少なくありません。

フォーチュン500という世界ランクTOP500の企業のリストから、上位10の製薬会社を選別し、残りの490社と比較すると、製薬企業10社の経済規模が、他の490社の合計より上回るという巨大な資金力を誇る製薬企業の影響力は、政府や政治家、省庁(CDCなど)や役人、大学や研究機関、医師会・専門医ボード・医学部教授や医師、医学誌・科学誌および編集部などにも波及しています。

その結果、根拠に基づく医療の根幹となる根拠(エビデンス)が、製薬企業や医療機器企業などの経済的影響力によってバイアスが生じ、もはや信用するに値しない状況になっていると、複数の医学誌・科学誌の編集長らによって指摘されています。

一言で言えば、「論文を書く医師も、研究を行う施設である大学や研究機関も、論文を審査するピアレビューの専門医も、論文を選択し掲載する医学誌の編集部も、製薬企業からの経済的支援を受けており、製薬企業の思い通りの論文が医学誌に掲載されて根拠となる仕組みが作られた」ということです。

また、その影響力はテレビ、ラジオ、新聞、雑誌などのマスメディアやインターネット上のYoutube、Facebook等のSNSにも顕著に表れており、勇気ある医師・専門医・免疫学教授といった専門家の発言や指摘が「CDCの指針と一致しない」という様な理屈で削除されたり、フェイクニュースという表示が付けられる一方で、医師でもなく医学的学位を持たないビルゲイツ氏の発言は、大々的に取り上げられています。

彼はワクチン接種を推進していますが、その彼がある種のコロナウイルスの特許を取得していることと、複数のワクチン製造会社の大株主であり、製薬企業側の人間であること、そして潤沢な資金を持ち、CDCやWHOなどにも大きな影響力を持つことが指摘され危惧されています。

「CDCそのものも多くのワクチン特許を取得しており、中立性を保っているとは言えない」とロバートケネディJr弁護士も指摘しており、タバコの有害性など過去に多くの誤りを犯していることからCDCの判断が常に正しいとは言えないのが現実にも関わらず、言論統制のようなものが布かれているのがアメリカの現状です。

EBMの根拠も崩壊し、WHOやCDCなども信頼できず、マスコミやネット上の情報も操作・統制されている今日、カイロプラクティックが免疫機能に有益である情報を一般の人が知る機会が制限されています。

我々カイロプラクターがICAの情報をもっと発信していく必要があるのではないでしょうか。


カイロの倫理とエゴ(121号掲載)

カイロプラクティックという言葉は、125年前には存在していませんでした。

1895年の9月18日に米国アイオワ州ダベンポートのライアンビルの4階の一室で、磁気治療家のDr.ダニエル・デービッド・パーマー(以下、D.D.)が、17年間難聴であったハービー・リラード氏に、「この後方に突出した椎骨を押し戻したら神経の機能が回復して難聴が治るに違いない」という確信に基づいて行ったアジャストメントによって創始された新しい医療システムに、その創始者が付けた名称こそがカイロプラクティックです。

遵って、カイロプラクティックという名称とその定義はD.D.によって定められ、誰もその定義を書き換える権利はなく、何人もカイロプラクティックの名の下に羊頭狗肉の如く、定義に合わない方法や他の療法を行うことは許されないことです。

今日、我々カイロプラクターが胸を張ってカイロプラクティックを業とすることが出来るのは、創始者のD.D.のお陰だけではありません。

創成期の頃にはD.D.もB.J.(D.D.の息子)も無免許医療行為などで起訴され、同様に日本人初のDCである森久保重太郎DC,Ph.Dや、多くのパイオニアであったDCたちが、カイロプラクティックの効果と盛業に嫉妬した医師らによって訴訟を起こされて戦ったのです。

最も多く投獄されたカイロプラクターとして知られているのは、リーバーDCです。

リーバーDCは、1928年にパーマースクール(現パーマー大学)を卒業しオハイオ州で開業しましたが、当時のオハイオ州にはカイロプラクティックの免許があるものの「制限付き医師」という位置付けで西洋医学の医師の管理下にあり、リーバーDCは「ナンセンスだ」と無免許で開業し、盛業していました。

そして12回以上も嫉妬した医師と医師会、州の免許ボードなどから訴えられて逮捕・収監されたのです。

(写真①)Eブック参照

リーバーDCは、カイロプラクティックの独自性を護り、カイロプラクティックの専門職を護り、米国市民の医療選択の自由を護るために自らを犠牲にしても戦ったのです。

リーバーDCは2000年2月7日に93歳で他界するまで、70年以上に亘ってカイロプラクティックを臨床し、ICAの副会長としてB.J.を支えた真のストレート カイロプラクターでした。

リーバーDC以外にも創成期のDCたちの多くが自らの身を犠牲にしてもカイロプラクティックの独自性を護るために、無免許医療行為で訴えられる度に「私が行っているのはカイロプラクティックであって、西洋医学やオステオパシーではない」として無罪を訴えて戦い、投獄され、罰金を科されても主張を固持し続けたのです。

(写真②)Eブック参照

そして、彼らの自己犠牲的・献身的な戦いと、彼らを応援する患者達、またB.J.パーマーDCとUniversal Chiropractors’ Associationの支援などによって、カイロプラクターたちは法廷で勝利を収め、やがてカイロプラクティックの法制化へと繋がり、全米50州で、そして世界の先進諸国での法制化に続いているのです。

人として、カイロプラクターとして高い倫理観を持つ彼らのお陰で、我々は今日もカイロプラクティックを臨床することが出来るのです。

自分の都合やエゴでカイロプラクティックを金儲けの道具として使ったり、西洋医学に偏向して専門職の独自性を破壊するような言動をする者は、その低い倫理観でリーバーDCのような偉人達に対して恥ずかしいとか、申し訳ないと思わなければならないのではないでしょうか。


カイロの真価①(120号掲載)

カイロプラクティックは西洋医学とも東洋医学とも異なる独自の哲学・科学・芸術を持ち、サブラクセーションを代表とする独自の理論に基づいて進化・発展し、124年もの間、多くの患者を救い、健康維持、アスリートなどの能力発揮やケガの予防などさまざまな形で世界人類に貢献してきました。

その最も特殊なところは、痛みなどに代表される「症状」をケアの対象とせず、不調の原因である「サブラクセーション」を見つけて取り除くというところです。

例えば、「カイロプラクティックは突発性側弯症を治せるのか」ということを問う人がいます。しかし、側弯症には遺伝的要素の関与がある場合や、脳の問題が影響する説もあり、原因は必ずしも一つとは限りません。

私はカイロプラクティックで突発性側弯症が治せるかどうかは明言しません。何故なら側弯症は症状であり病名だからです。

しかし、突発性側弯症といわれる患者をケアしたことはあります。

写真1 Eブック参照

写真1は12歳の男子で親御さんが姿勢の悪さを気にして連れてこられた症例です。

写真2 Eブック参照

写真2は胸腰椎部が中心の側弯の症例です。

写真3 Eブック参照

写真3は頚椎と腰椎に傾きがあるタイプのS字状側弯の症例です。

カイロプラクティックによってサブラクセーションが取り除かれ、それが原因で起こっていた側弯曲は減弱したといえると思います。

カイロプラクティックは症状を治療したり、背骨を真っ直ぐにするものではありません。しかし、正しくカイロプラクティックを施せば、結果は出るものです。

C.S.ガンステッドDCは、「結果が出ない時は、カイロプラクティックの原理・原則に疑問を持つ前に、自分の臨床の方法に問題がなかったかを見直せ」という言葉を残しています。

カイロプラクティックは素手でサブラクセーションをアジャストするものであり、それで結果が出せてこそカイロプラクターなのです。

そのために我々は哲学を学んで原理・原則を理解し、進むべき方向性を確認し、最新の科学を研究して発展させ、芸術としての手技の鍛錬を継続するのです。

いくら症状が良くなっても、素手でサブラクセーションをアジャストしていなければ、それはカイロプラクティックではありません。


カイロの存在意義⑥(119号掲載)

カイロプラクティックはサブラクセーションを見つけて、どの椎骨がどの方向にどの程度不整列を起こし、その退行性変性の度合いはどうか等の状況を分析し、必要な時に、必要な椎骨に、必要な方向に、必要な深さでアジャストをするものですから、分析にはX線写真が必須と言っても過言ではありません。

また、不整列の状態を分析するだけではなく、アジャストを加える椎骨の解剖学的あるいは病理学的な所見を確認することが、プライマリーヘルスケア(第一次医療)のドクターとしても医療過誤防止のためにも必要です。

写真1は、第2腰椎にアイボリー・バーテブラと呼ばれる象牙のように白く見える所見があります。この症例は65歳の男性で前立腺癌が転移したものです。悪性腫瘍によって椎体が侵されていますからアジャストは禁忌で、早急に転医が必要です。

写真2は、第1腰椎にウインク・オウル・サインと呼ばれるぺディクルが片側消失している所見があります。この症例は70歳の女性で乳癌が転移したものです。悪性腫瘍が椎骨を侵しているわけですから、直ぐに転医です。

写真3は、脊椎分離症が第5腰椎にあります。この症例は30歳の女性で階段状変形が無いので、視診や触診で分離を発見することは困難です。分離に気が付かないまま第4腰椎をアジャストしたり、腰仙部に捻転が加わるような手技を行うと分離が悪化する可能性があります。

この写真4は、横突起過形成が左側にあるベルトロッティ症候群の所見があります。この症例は43歳の女性で、肥大化した横突起が仙骨と偽関節を構成するような仙骨化の状態があり、禁忌とまでは言えませんがその椎骨にアジャストするには注意を要します。

写真5は、第2頚椎歯突起の形成不全があります。もしX線写真で確認せずにアトラス(C1)に深いアジャストをした場合、最悪のケースでは脱臼を起こして脊髄損傷ということも起こりえます。

これらのケースはX線画像を確認せずに発見することはできません。患者の安全と利益のためにX線検査が有益であることの証拠であり、特に3や4の症例は稀ではないのです。

脊柱にマニピュレーションを施す他の専門職のMDやDOはX線検査して病理学的診断はできますが分析はしません。DPT(理学療法博士)はX線検査も分析も出来ません。

しかし、DCはX線撮影も分析もでき、その上でアジャストをすることができるのです。

他の専門職ができない、しない独自のX線分析法を用いるカイロプラクティックは、安全かつ正確なアジャストを提供できる唯一の専門職として存在価値があるのです。

1909年にBJパーマー先生がスパイノグラフと呼んでX線検査をカイロプラクティックに導入したことで科学的に発展し、訴訟に勝って独自性が認められた歴史を忘れてはならないのです。


カイロの存在意義⑤(118号掲載)

先回、ACAのX線写真撮影に関する反カイロプラクティック的な指針に対して、国際カイロプラクターズ協会(ICA)などの業界団体や大学が拒否をしたことを紹介しましたが、2019年5月1日付で国際カイロプラクターズ協会が国際カイロプラクティック連盟(WFC)に対してWFCの所属団体として正式に不服申し立てを行ったと発表しています。

それは、WFCがサブラクセーションを否定するような表明をしたからです。

サブラクセーションはカイロプラクティック専門職にとって金科玉条と言える最も大切にして守らなければならない重要なカイロプラクティック独自の理論です。

それを否定することは、カイロプラクティックの哲学を否定することに繋がり、カイロプラクティックそのものを否定することになります。

カイロプラクターがサブラクセーションを取り除くことを目的とせず、その他の企図によって脊柱にマニュピレーションを行うのなら、それはオステオパスやフィジカルセラピスト(理学療法士)によるマニュピレーションや整体師による矯正との違いが明瞭ではなくなります。

カイロプラクティックの三位一体である哲学・科学・芸術に基づき、それらに準ずる方法でサブラクセーションを見つけて、それを取り除くために素手によってアジャストすることがカイロプラクティックであり、その中心をなすサブラクセーションを否定してはカイロプラクティックは成立せず、もはや存在理由がなくなります。

カイロプラクティックの名の下で、鍼治療、ホットパックなどの温熱治療、低周波などの電気療法、マッサージなどの他の治療法などを施すミキサーと呼ばれるDCも少なくないのが現状です。 そういった東洋医学の鍼、西洋医学の理学療法、マッサージなどとゴチャ混ぜな臨床を患者に提供し、それがカイロプラクティックであるかのようにウェブサイト等で情報発信するミキサーたちによって、患者はカイロプラクティックが何であるのかを正しく理解することが出来ず、カイロプラクティックの独自性は混乱し、やがて崩壊してしまいます。

かつてオステオパシーという専門職が存在しましたが、やはり創始者のスティルDO、MDの哲学を蔑ろにし、技量の研鑽より目先の症状軽減を重要視したDO達によって薬の導入を許し、その後は外科手術も導入し、終いにはMDと同様に医業を臨床するようになり、完全に同化してその独自性を消失してしまいました。

今日でも、極僅かなDOたちが手技を継承・臨床してはいますが、専門職としては有名無実と言える状態です。

米国では専門職ごとに保健請求などで用いる診断及び医療処置コードを編集した冊子が販売されていますが、内科、皮膚科、整形外科、理学療法科など専門別に冊子が作られています。

カイロプラクティックの冊子もあり、M99.11頚椎サブラクセーションといった診断コードや98940アジャストメント脊柱1~2部位という処置コード等のカイロプラクターがよく用いるコードが冊子に編集されています。

しかしオステオパシーという専門の冊子はありません。 西洋医学と同化し医師(MD)と同じ診療をしているのだから、医師と同じコードを使うわけであり、別の専門冊子は不要です。

遵って、カイロプラクティックもマニピュレーションを行い、理学療法・運動療法ばかりを提供するようになれば、遠からずカイロプラクティックという専門職用の冊子も不要になり、オステオパシーと同じ轍を踏むことになるでしょう。

オステオパシーはMDに準ずる形でドクターとして医学を業としていますが、カイロプラクティックは理学療法に吸収されてしまう可能性すら否定できません。

米国でオステオパシー、ホメオパシー、ナチュロパシー等の医療が西洋医学から攻撃されて事実上壊滅し、独立を守ったのはカイロプラクティックだけであるということを歴史から学び、守り続けなければなりません。


カイロの存在意義④(117号掲載)

カイロプラクティック界には創成期の頃から獅子身中の虫とも言える者たちとの戦いの歴史があります。

その根底にあるのは、やはりカイロプラクティックの哲学を理解しているか否かという所にあるように思えます。

最近では、米国カイロプラクティック協会(ACA)というナショナル系・ミキサー系のDC達が創始した団体が「Choosing Wisely」と銘打ったガイドラインを発表し、その中でX線撮影に関して「急性の腰痛患者では6週間はX線検査をするべきではない」と記しています。

それは西洋医学の医師(MD)なら当てはまるでしょうが、カイロプラクティックには全く当てはまりません。

こういった的外れで反カイロプラクティック的なガイドラインを平気で発表するあたりが、サブラクセーション理論を理解していない、カイロプラクティック哲学を理解していない、そして西洋医学偏向思考の結果ではないでしょうか。

それゆえに、国際カイロプラクターズ協会(ICA)を筆頭に、イリノイ平原州カイロプラクティック協会(IPSCA)やフロリダ、ジョージア、ユタ、アイダホ、ニューヨーク、ミシガンといった州の団体、シャーマン大学、ガンステッド・メソドロジー研究所など29以上の業界団体・組織がACAのこのガイドラインのX線検査の部分に対して拒否を表明しています。

また、豪州カイロプラクティック協会が、「乳幼児に対する脊柱マニピュレーションを禁止」とする規則を制定したと報じられています。カイロプラクターはアジャストメントをしますが、マニピュレーションはしないのです。とにかく、乳幼児にカイロプラクティックは禁忌という主張です。

米国カイロプラクティック協会も豪州カイロプラクティック協会も、「エビデンスが無く、有効性も安全性も証明されていない」というのが理由の主たるものということだそうです。

しかし、この「エビデンス」と呼ばれるもの、つまり「科学誌・医学誌にピアレビューを経て論文が掲載される」というものの信頼性が根底から破綻していることは以前に紹介しました。

西洋医学が支配する、そして製薬企業の巨額の資本力の影響下に置かれている科学誌・医学誌に掲載された「約半分は嘘」とまで編集長に言われている「所謂エビデンス」を妄信せず、業界として、専門職として基礎研究を行うべきでしょう。

また、利益とリスクを充分に考慮し、明らかにリスクが便益より高いことが証明されていない現状での禁止の決定は、それこそがエビデンスの欠如ではないでしょうか。

そして、カイロプラクティックのX線検査・分析の臨床上の有効性とリスクにせよ、サブラクセーション理論にせよ、エビデンスがないと否定する前に自ら調査研究して事実を解明しようとするべきです。

研究は開業し臨床しているDCでは限界があるので、ACAなどの業界団体が大学と協力して行うべきことですが、それもしないでエビデンスがないというのは無責任にもほどがあるのではないでしょうか。

彼らの大好きなエビデンスによると、西洋医学の医療行為の15%しか根拠がない、西洋医学は米国民の死亡原因第3位、医療過誤が米国民の死因の第3位、医薬品の宣伝の6%しか根拠がない、薬の副作用で毎年1600万人が入院し内16万人が死亡、など西洋医学の医療行為の問題点が多数報告されていますが、米国とオーストラリアの協会さん達は「医療行為を禁止」と医師や医師会には言っていません。

エビデンスがリスクを証明しているにも関わらず医師には何も言わないのに、身内にだけ余計なことを言うのは何故でしょうね、立ち位置が不明です。

カイロプラクティックの哲学を理解していないがゆえに、カイロプラクティックの可能性も知らず、西洋医学側の理論や主張を受け入れる行為は、カイロプラクティックの未来、いや人類の未来に対する罪といえるのではないでしょうか。


カイロの存在意義③(116号掲載)

21世紀の今日でも、純粋にカイロプラクティックを愛し、伝統を継承し、識能を練磨し、ガンステッドの上部頚椎のテクニックで多くの患者をカイロプラクティックで救っている真のカイロプラクター(DC)達が存在します。

米国では、多くの患者達が自分の持つ医療保険のネットワークに入っているドクターを探しますが、保険を使わずに自由診療で臨床しクリニックを運営しているDCも少なくありません。

モダリティーと呼ばれる様々な他の療法を一切加えず、素手によってのみアジャストするケアだけで、保険にも頼らずに盛業しているDC達の存在そのものが「カイロプラクティックの真価」を証明しています。

そういった真のカイロプラクター達は、患者教育の重要性を認識しカイロプラクティックとその健康観などを根気良く患者や地域社会に伝道し続けています。

また、BJパーマーDC,PhCがそうしたように、最新の科学技術を常に取り入れて、サブラクセーションを矯正することで得られるカイロプラクティックの効果などを証明しようと努めています。

2018年9月28・29日に開催されたICAカイロプラクティック哲学評議会とカイロプラクティック発展センターの主催する適応性研究シンポジウムに出席した際にも、ガンステッド系の数人のDC達を中心にKubios社製のHRV(Heart Rate Variability)計測システムを用いて交感神経トーン、副交感神経トーンなど自律神経の機能を測定し分析することで、サブラクセーションへのアジャストが神経系に及ぼす作用を研究しデータを共同で集積した経過報告がありました。

また、2018年11月にICA上部頚椎ケア評議会の会長に選ばれたIan Bulow, DC, DCCJPはブレアーというHIOから派生したテクニックの達人ですが、ConeBeam CT 3D imageという歯科用を改良したCTを用いて3Dの頚椎画像を撮影し、上部頚椎の分析法を発展させています。

こういった試みが真のカイロプラクティックの進化であり発展に繋がるものです。

巷にはDCであってもカイロプラクティックを修得できず未熟なテクニックのまま結果が出せないことを補うために他の方法を付け足したりして進化させたと嘯いている輩が多い中、本物のカイロプラクターがこうして活躍している事実を日本のカイロプラクターの皆さんにも知って欲しいと思います。そして、真のカイロプラクティックを修得し臨床するようにして頂きたいと思います。

DCの中には、サブラクセーションは根拠がない過去の概念だからカイロプラクティック専門職として削除し使わないようにしよう、と主張する獅子身中の虫もいます。

しかし、先回の記事で、根拠と言われる医学・科学誌に論文が掲載されるという事が、製薬企業などの資金提供の影響でもはや信用できない状況になっていることを紹介しました。

その影響の一つが、製薬企業の敵である薬を用いないカイロプラクティックを貶めることであり、多くの医学誌ではサブラクセーションやアジャストメントというカイロプラクティックの言葉を用いる論文を排除するという傾向にもありました。

いくらDCが論文を寄稿しても、サブラクセーションという単語を使えば掲載されないのですから、根拠が作れない仕組みになっているのです。ご存知でしたか。

そんな厳しい状況下で、信念あるDC達は臨床・研究し、地道にカイロプラクティックを未来へ継承する努力をしています。モダリティーと呼ばれる様々な他の療法を一切加えず、素手によってのみアジャストするケアだけで、保険にも頼らずに盛業しているDC達の存在そのものが「カイロプラクティックの真価」を証明しています。これからも同じ志を持ったカイロプラクターを増やしていくことが、今後の業界には必要なのではないでしょうか。


カイロの存在意義②(115号掲載)

カイロプラクティックの専門職にナショナル(NUHS)の創立者であるジョンFAハワードが理学療法を持ち込んで以来、カイロプラクティックは独自性を失うリスクを背負って分裂してきました。

ナショナル系の西洋医学偏向の大学では、理学療法はDC学位過程の必須科目となり、逆にカイロプラクティック哲学は教えないようになっていきます。

米国カイロプラクティック国家試験(NBCE)でも理学療法(PT)の科目が創られ、また州の開業免許の条件の一つに、その合格が求められる州もあります。

そうして、純粋にストレート・カイロプラクターを目指している学生であっても、自分が開業を希望している州によっては理学療法を学ばざるを得なくなり、パーマー系の大学も選択科目として理学療法を教える必要性にせまられたのです。

遵って、今日では北米の全てのカイロプラクティック大学で理学療法が教えられ、更に薬学や栄養学などといった西洋医学の科目をDC学位過程で教える所もあるありさまです。

その結果、DC学位を取得して国家試験に受かっても、カイロプラクティックの哲学も芸術も十分に修得せず、医学知識に偏った頭でっかちのDCとなり、素手によってなされるアジャストの修得の意欲も努力もないまま安易な器具による刺激療法の様なテクニックに流れる者が多いのです。

それはパーマーカイロプラクティック大学ですら例外ではないほどで、「パーマー大学卒イコール優秀なカイロプラクター」というのは過去の栄光と言えるくらいの惨状です。

そうしてカイロプラクター達が本来の「アジャストメント」のパワーと価値を貶めて「マニピュレーション」と混同し、そして自らの施術をマニピュレーションという言葉を用いる風潮がもたらしたものは何でしょうか。

この写真はある医学専門職の学会誌です。どこかで見覚えのある手技だと思いませんか。そう、これはディバーシファイドのミリオンダラーロールと呼ばれる古典的カイロプラクティックの骨盤矯正法です。

この医学誌は「整形外科&運動理学療法ジャーナル」2004年4月号で、理学療法士のものです。

カイロプラクターが彼らの領域を侵した事に反撃して、近年特にその有効性や安全性が認められている脊椎調整を自分達のモノにしようと虎視眈々と狙っていたのです。

かつて理学療法士が脊椎調整を臨床する権利を主張した時、裁判によって「脊椎調整はドクター(MD・DO・DC)レベルの者でなければならない」と却下されました。

MDやDCの様に第一専門職学位になれない彼らは、アカデミック学位の博士号(PhD)を理学療法士の免許取得の条件にし、理学療法博士としてのドクターになり、また理学療法手技テクニックにGradedモビリゼーションに加えHVLAマニピュレーションとして高速低振幅の調整操作を導入して教えてきたのです。

その結果、理学療法士は、マニピュレーションは(西洋)医学のものであり、我々理学療法ドクター(博士)が適任者であるとばかりに攻勢をかけてきています。

このままではカイロプラクティックと理学療法の違いがなくなってしまい、独自性は消滅し、存在価値もなくなってしまう可能性が大いにあります。

DOが辿った道をDCも追従し、三流の似非医師のようにDC免許で医学を臨床する日がくるのでしょうか。素手でなされるアジャストの修得意欲もないまま、器具による刺激療法に流れる者が多くなるのでしょうか。カイロの存在意義が問われます。


カイロの存在意義(114号掲載)

カイロプラクティックの独自性の根幹は他の医学・医術とは異なる哲学・科学・芸術の三位一体によるものですが、それを蔑ろにするDC達によってその存在意義が失われ、将来的にはオステオパシーが辿った滅亡への道を追従する危機に直面しています。

西洋医学は出血性外傷、複雑骨折、心肺停止など重篤な患者への救命救急では抜群ですが、一般的な患者の場合はどうでしょうか。

一般的な14種の症状に対する診断所見結果は、心理学的原因:10%、器質性原因:16%、原因不明:74%。(American Journal of Medicine 1989)

僅か約15%の医療行為しか科学的な証拠に基づいていない・・・これは一部である、何故なら医学誌に掲載された論文のたった1%のみが科学的と考えられるからだ。(British Medical Journal 1991)

 毎年千六百万人が、処方された薬の副作用で入院し、十六万人がその副作用が原因で死亡している。毎年十八万人が医師が原因の傷害で死亡している。(Journal of American Medical Association 1994)

心臓病や癌などの死因に続いてアメリカでの死亡原因の第三位は医師(西洋医学医師)。医原病で死亡する人は年間23万人~28万4千人で、調査に多少の誤差があったとしても第4位の脳血管障害との間には著しい差がある。(Journal of American Medical Association 2000)

医薬品の宣伝材料の僅か6%しか根拠がない。(British Medical Journal 2004)

医療(西洋医学)が原因で死亡する米国人は毎年78万3936人、心疾患が69万9697人、癌は55万3251人と、西洋医学は米国民の第一の死亡や負傷原因。(www.lef.org ,2004)

米国での死亡原因は、第1位が心臓疾患(約61万1千人)、第2位が癌(約58万5千人)、第3位が医療過誤(約25万1千人)、第4位は慢性閉塞性肺疾患(COPD:約14万9千人)であり、医療ミスが死亡原因の第3位である。(British Medical Journal 2016)

これらの研究論文で明白なように、西洋医学は皆が信じている程には科学的でもなく、原因を解明している訳でもなく、効果的でも安全でもないばかりか、死亡原因の第3位という危険な医療です。

論文が掲載された臨床研究、高名な医師の判断や権威のある医学的指針などを信頼することは、もう不可能である。The New England Journal of Medicineの編集長を20年以上務めた私が、ゆっくりと、嫌々ながら至ったこの結論に全く喜びを持てない。(Dr. Marcia Angell)

可能性として、出版された論文の半数は、単純に言って虚偽だろう。(Dr.Richard Horton, Editor in Chief of The Lancet)

権威ある科学・医学誌の二人の編集長が指摘するように、製薬企業や医療機器企業による、医師、研究者、大学、学会、行政、そして学術誌やその編集者への寄付・研究資金等の提供などの経済的支援によって、研究論文や指針、医師の判断すら最早信用するに値しない時代となり、根拠に基づく医療もその根拠が崩壊している状況です。

対照的に、The American College of Physiciansの腰痛診療新ガイドライン2017年版で、急性・慢性ともにカイロプラクティックは安全で有効と推奨されるなど、まだ特定疾患だけだが、その真価は評価されてきています。製薬企業による研究費支援を受けない、まだ信頼できる研究によって、評価されているのです。

 西洋医学の問題点が露呈した今こそ、カイロプラクティックを純粋に守り、研究し発展させて、安全で効果的な独自の医療として存在させることこそが、我々カイロプラクターの責務であり人類への貢献となるのではないでしょうか。

(参考)https://www.youtube.com/watch?v=jcnd3usdNxo&feature=youtu.be

https://www.youtube.com/watch?v=aRBvMQBucxg


米国カイロの歴史と潮流(113号掲載)

カイロプラクティックの創始者DDパーマーが、「カイロプラクティックとは、自然の法則に基づく、哲学・科学・芸術であり、不調の原因となる脊柱上の分節を、素手によってのみアジャストをするシステムである。」と定義している。

また、「私達はカイロプラクティックを私達の患者に対し純粋なまま与えている。もし、それが他の如何なる方法とでも混ぜられたなら、すぐにその独自性を失ってしまうだろう。」と言っています。

それにも関わらず、ナショナル系のDC達は理学療法などを持ち込んで自分の学校の教科に入れたり、哲学は教えず内科学などの西洋医学の科目を教えるなど、創始者の定義や指針を蔑ろにしてでも、特徴を作り差別化を図ってきた事は以前にも紹介しました。

そして、政治的活動に長けた彼らは、CCEやNBCEなどを創設し、カイロプラクティック教育を支配することで自分達の考えを業界の基準に押し付けたのです。

本場アメリカでは、カイロプラクティックを業とする者は、CCEの認定を受けたカイロプラクティック大学を卒業し、NBCEの国家試験に合格した後に州政府に免許を申請し、州の要求する条件を全て満たして開業免許を交付された者に限られます。

つまり、米国でカイロプラクティックを臨床している者は基本的にDC学位を取得しているのですから、大学でカイロプラクティックを学び、ドクターとして臨床するに必要な知識と技術を学んでいる筈です。

しかし、現実にはそこに大きな落とし穴があります。

大学を卒業しDC学位を取得しただけでは開業できず、NBCEの国家試験に合格しないと州政府に免許申請が出来ないという点です。

先ず、カイロプラクティック大学は、CCEの認定を受けなければなりません。その為にCCEが要求する諸々の条件を満たさなければいけないのです。

CCEの認可を受けるために、多くの西洋医学の科目を教える必要があり、またNBCEの国家試験はほとんど医師国家試験と言ってよい程に西洋医学の知識を求められ、カイロプラクティックの問題は無いに等しい状況です。

その結果、パーマー大学を卒業したDCであっても、国家試験科目の履修に忙殺され、カイロプラクティックの哲学を真面目に学んでいない者が多く散見されます。

また、多様性が重要などとして、一定数の教員は他大学卒の者を雇用しなければならなくされ、パーマー大学にもナショナル系のDCが入ってきたことで組織としての統一性が失われました。

その結果、パーマー卒のDCでも創始者の定義を理解せず、「素手でなくても、器具を用いてもいいじゃないか」とか、「カイロプラクターが薬も処方できる様に法改正しよう」といった専門職の独自性を破壊し、西洋医学の隷属的地位に貶める発言や行為が散見されることに繋がっています。

つまり、政治的な力で教育を支配することで、輩出される新卒のDC達が自分達の思想の影響下におかれ、次第に業界の大多数を占めるようにしたのです。

国家試験受験資格を盾にして、西洋医学偏向のミキサー的思想に抵抗感をなくさせたと言えるでしょう。

CCEやNBCEには、教育レベルの向上、医学界からの認知向上という表の面だけでなく、専門職の独自性に与えた負の面があるのです。ご存知でしたか?


テクニックに絡む問題2(112号掲載)

本場アメリカでも、カイロプラクティックのテクニックと謳っていますが実際にはカイロプラクティックとは云えないものも多く散見されます。

以前に紹介した素手でアジャストを行わず器具を用いる類もそうですが、実はカイロプラクティック・アキュパンクチャーと呼ばれているものもあります。アキュパンクチャーとは鍼治療のことです。

我々日本人なら、カイロプラクティックは米国発祥の独自の徒手医療システムで、鍼治療は中国を起源とし、中国・日本・韓国など東亜細亜で発展普及した東洋医学の一部と理解していますから、カイロプラクティック鍼治療など有り得ないと思うのが普通でしょう。

それは、カイロプラクティックと鍼(東洋医学)の両方に対する侮辱・冒涜であり、両専門職にとって破滅的悪影響を与える危険性すらあります。 

困ったことに、カイロプラクティック・鍼治療評議会を設立認定しているのが、あの米国カイロプラクティック協会(ACA)なのです。

ACAは、鍼の他にもカイロプラクティック・オーソベディックス(整形外科学)やリハビリテーション、診断と内科系疾患などの評議会を持っており、西洋医学の範疇、東洋医学の範疇のものと「ごちゃ混ぜ」の状況です。

また、他にもアニマル・カイロプラクティックと謳っているものもあり問題になっています。

アニマル(動物)を診察、診断、治療できる専門職は獣医師であり、米国でも州の法律や条令等によって差があるもののカイロプラクターが動物に施術を行うことで獣医師とトラブルになるケースがありました。

現在は、米国獣医(家畜)カイロプラクティック協会(AVCA)なる団体が、DCと獣医師の両方に対してアニマル・カイロプラクティックの認定を与えているようです。

しかし、認定云々の前に、それをカイロプラクティックと呼ぶに相応しいのか、という問題があります。

BJパーマーは、アニマル・カイロプラクティックを研究していましたが、結局それをカイロプラクティックとして導入しませんでした。

動物の種によって脊椎の形状等が異なる、X線フィルム分析を行えない、NCMなど温度計測機器が使えない、などカイロプラクティックの科学が生かせない事に加えて、獣医師との争議を避ける為であったと云われています。

私は、パーマー大学で脊柱解剖学2解剖実習用学習ノートを出版しており、脊椎への関心から、人間、マンモス、鹿、猫、狼、兎、大山猫、カワウソ、北極狐など計18種の哺乳類の第1頚椎(一部はC2とC3も)を収集し、形状などを研究していますが、写真の様に同じ哺乳類でもC1だけでこんなに形状が違うことが判ります。

人間の脊柱だけでも解剖学的に理解するのは大変なのに、他の動物のそれを十分に学んでいるのでしょうか?

こんな種によって解剖学的にも形状からして異なる脊椎のサブラクセーションを、前述のカイロプラクティックの科学であるツールも使わず、どうやって判定するのでしょうか? アジャストも何を根拠に、どこにコンタクトして、LOCはどうするのでしょうか?  

BJパーマーは云っています、「カイロプラクティックはスペシフィックであり、そうでなければ無価値である」

動物へのマニピュレーションにスペシフィックであると云える要素は皆無だとBJは判断したのでしょうか。


テクニックに絡む問題1(111号掲載)

カイロプラクティックは哲学・科学・芸術の三位一体であることは、創始者のDDパーマーによって定義に謳われています。その芸術にあたるのが静止触診、動態触診などパルペーションや、矯正操作のアジャストメントといった、ドクターが素手で行う「手技」の部分です。

ところが、定義によって「素手によってのみアジャスト」と定められているにも関わらず、道具・器具を使って矯正・調整操作を行おうとする者がでてきました。カイロプラクターが用いるテクニックで道具を施術に使うものは、アトラスオーソゴナル、ペティボン、コーレン・スペシフィック、グラストン等々がありますが、最もよく知られているのはアクティベーターでしょう。しかし、意外と知られていないのはアクティベーターのルーツです。

写真は、パーマーカイロプラクティック大学のLYCEUM HALLのフロアーに展示されているものを撮影したのですが、そのルーツが説明されています。その説明では、「1945年5月に特許取得した改良型Dr.Reiterのオートマチック手術用マレット(槌)。それを改装したものがアクティベーターとして1984年にカイロプラクティック界に紹介された。」と書かれています。

そう、アクティベーターは元々、医師(MD)が手術に用いる手術器具だったのです。その先端に装着する付属部品を金属の刃からゴムに挿げ替えたものをアクティベーターと名付けてカイロプラクティック界に持ち込んだのです。アジャストが下手で手などを傷めたDCが代替案で器具を開発し自分で使う分にはまだいいのですが、米国人はすぐにセミナーをして稼ぎ、器具を売って稼ぎ、と商売にして他に売りつける傾向があるのも問題です。

一般の常識からすれば、手術器具を用いて施術を行えば、それは手術を行った(医療行為)と見なされても仕方がないのですが、一部のカイロプラクター達から受け入れられました。カイロプラクティックの定義に沿った本来のカイロプラクティックのテクニックは素手によってのみアジャストするのですが、それらは修得するのに相当な訓練が必要であり、容易ではありません。しかし、器具を用いて脊柱周辺に刺激を与える方法であれば、そのプロトコールさえ覚えればよいので誰でもすぐに使えることから受け入れられ易いのでしょう。

また、素手によってアジャストする場合と比較してアクティベーターのような器具で刺激する方が安全であるような事を宣伝する者もいますが、それは正しいとは言えません。私のクリニックの患者の中で、過去にアクティベーター等の器具を用いる治療を受けて体調が悪化した経験を報告された方も何人かいますし、2016年10月にはアクティベーター施術後に脳内出血を起こした症例が報告されています。(https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC5167612/)カイロプラクティックと脳出血のリスクについて医師から攻撃をうけるのは、器具による施術でも例外ではないのです。

個人の信条や哲学が西洋医学崇拝・偏向な人や金儲け主義の人がDCとなっても、カイロプラクティックの哲学や創始者DDの定義などに敬意も興味もなく、自分勝手な都合のよい理屈でカイロプラクティックを本来あるべき方向から悪しき方向へ牽引しているようですが、器具を用いて施術することも、その代表的な一例と言われています。


米国で増加する首の問題(110号掲載)

前回は、頚椎前弯減少が引き起こす様々な問題を紹介しましたが、今回は頚椎の前傾についてです。

医学誌「Modern Manual Therapy of the Vertebral Column」に掲載された論文では、次のように言明しています。「頭部が前方移動した姿勢を矯正されていない人達は、神経や血管の炎症・緊張、胸郭出口症候群のような状態、筋肉や組織の痛み、結合組織炎のような症候群、慢性的緊張、若い年齢での退行性変性や関節炎などの、慢性的或いは不快な状態を被る可能性が高い。」首が前傾し、頭部が前に移動した姿勢のような「悪い姿勢」は、様々なストレスを身体に加える結果となり、神経や血管などの機能不全や炎症、緊張などを引き起こし、高血圧や退行性変性などの原因ともなるのです。

正常な頚椎の場合、頭部の重量が通過する重心線は第7頚椎の椎体部を通ります。しかし、頚椎の前傾が起ると重心線は第7頚椎の椎体部を通らず、その前方を通ることになります。一般的に人間の頭は体重の1割程の重量がありますから、体重50kgだと頭の重さは約5kgです。しかし、頚椎が前傾すると、その重心線が1インチ(約2.54cm)前方に移動する毎に10ポンド(約453.6g)の負荷が頚部に加わります。

例えば、体重80kgの男性で、頚椎が前傾して重心線が2インチ前方移動していれば、頚部に掛る負荷は約9kgにもなるのです。このような負荷は当然ストレスとなりますから、頚部のサブラクセーション(不整列)退化の悪化を引き起こす原因ともなります。

この写真では、頚椎前弯が消失した上に前傾しており、第5~7頚椎に退行性変性である骨棘など変形性頚椎症の状態がみられ、第5頚椎棘突起の後部に棘上靭帯骨化症(Nuchal Bone) もみられます。

2枚目の写真では、頚椎前弯が減少した上に前傾しており、第6頚椎に骨棘がみられ、第4~6頚椎棘突起の後部に大きな棘上靭帯骨化症が認められます。

3枚目の写真では、頚椎前弯が減少した上に著しく前傾しており、第6~7頚椎、第7頚椎~第1胸椎に椎間板萎縮が認められます。

4枚目の写真では、頚椎前弯が減少した上に前傾しており、第5・6頚椎に骨棘がみられ、第1頚椎が奇形で後弓が欠損しています。この様に、PCの使用・スマホの使用が一般的となった今日では、その使用時の姿勢の悪さやストレスなどから脊椎にサブラクセーションが起り、その結果として頚椎前弯減少や頚椎前傾といった状態になっている人が増えています。写真3や4などのケースでは、X線写真による分析なしに椎間板萎縮やアトラス(C1)の奇形などは知りえないことですから、脊椎を矯正するカイロプラクティックにX線検査が必要不可欠なことが理解できます。


米国で増加する首の問題(109号掲載)

カイロプラクティックの本場アメリカでも近年、様々な理由でX線検査を行わないDCが増えています。その理由には、X線フィルム分析を必須としているカイロプラクティックの正統なテクニックを用いていない、X線撮影装置を購入するお金がない又は設置する場所がない等、幾つかあるようです。

しかし、それとは裏腹に、アメリカではX線写真で判明する首の問題が近年注目されています。それは、テキスト・ネックなどとも呼ばれる、スマホ、タブレットPCなどを多用する者に増加中の頚椎前弯の減少や頚椎前傾です。基礎医学である解剖学で脊柱解剖学を学んだ者は知っているように、正常な頚椎はX線写真側面像(図1)では虹のように前弯を描いて配列しています。

それが、悪い姿勢で長時間スマホを見続けるなどの物理的ストレスによってサブラクセーションが起こり、正常な配列を乱し、前弯が減少してストレート・ネック(図2)になっているケースが増えているのです。

程度の差こそあれ、正常な頚椎の前弯を失い、配列に異常・不整列が生じることは、人体にどんな影響を及ぼすのでしょうか。

ノーベル賞受賞者の神経外科医であるAlfred Breig 医師・医学博士は、次のように述べています。「命の円弧である頚部(首)のカーブ(前彎曲)を失うことは、脊髄を5~7cmも伸長させ、そして病理学的緊張を生み出し、身体を病的状態に至らしめる。」ニューヨーク脊柱手術&リハビリ医学の主任脊柱外科医であるKenneth K. Hansraj医師は、次のように述べています。「頚椎の自然な前弯カーブを失うことは、頚椎に掛るストレスを漸増的に増加させる状況に導く。」医学誌「Medical Science Monitor」電子版に2016年2月15日に掲載された論文で、Mehmet Deniz Bulut医師は、次のように述べています。「包括的な研究によって、頚椎の前弯消失が椎骨動脈の機能低下と重大な関係があることが判明した。それには、動脈の直径、血流量、心臓収縮期の頂点速度などの低下が含まれる。」

医学誌「The Journal of Neuroscience」に2007年8月1日に掲載された論文で、ロンドンカレッジ大学のIan J. Edwards博士は、次のように述べています。「首が動く時、首の筋肉細胞は脳に信号を送るが、体が姿勢を変化させた分に応じて適切な血液供給を確実にする為であろう。しかし、悪い姿勢によって細胞がダメージを受けると、そのシステムは衰弱し、結果として血圧が最適よりも高く、或いは低くなる。」

このように、頚椎の不整列(サブラクセーション)によって正常な配列が乱れ、前弯カーブを失うことだけでも、神経系の機能が衰弱し、心臓血管系など様々な機能異常の原因となり得ることが判明しています。


米国カイロの歴史と潮流6(108号掲載)

カイロプラクティックのテクニックは200種類ぐらい(程)あると云われており、その中から本場アメリカでよく用いられている様々な方法やテクニックがありますが、カイロプラクティック哲学専門医(DPhCS)の視点から分類して紹介します。

A、創始者D.D.パーマーの定めたカイロプラクティックの定義と整合性のあるカイロプラクティックのテクニック。

▼上部頚椎系:HIO(ターグルリコイル、パーマー上部頚椎スペシフィック)、ブレアー、ヌカ、グロスティック、ケール。

▼フルスパイン系:ディバーシファイド、パーマー・ディバーシファイド、ガンスティッド。

▼ドロップ・テーブル系:トムソン、ピアース・スティルワゴン。

B、器具を使うなど、定義の定める「素手によってのみアジャスト」に合わない、カイロプラクターに用いられているテクニック。

▼アトラス・オーソゴナル、アクティベーター、ぺティボン、コーレン・スペシフィック、トルクリリース。

C、オステオパシーや中医学(鍼灸、刮痧(かっさ)療法)など他の医学の治療法を模倣して、カイロプラクターが用いているテクニック

▼仙骨後頭骨テクニック(SOT)、アプライドキネシオロジー(AK)、グラストン。

このように、カイロプラクティックのテクニック(A)と、カイロプラクティックのテクニックではないがカイロプラクターに用いられているテクニック(B,C)に大きく分類されます。勿論、カイロプラクティックはテクニックだけが全てではありませんし、テクニックはカイロプラクティックを臨床する上での方法論・技術でしかありません。しかし、カイロプラクティックのテクニックを十分に修得していないDC、或いは、カイロプラクティック以外のテクニックを用いるDCは、カイロプラクティックの臨床で結果を出すことは出来ません。

ビジネス・マーケティングのセミナー等では、「テクニックなんか何でもいい」と教えます。そして、モダリティと呼ばれる理学療法などを行い、サプリや腰痛ベルトなどを販売し、通院毎の収入を増やすか、患者毎の通院回数を増やすかなどの収入方法のことしか教えません。先回の手先が不器用な人が多い事に加えて、経営セミナー等での利益第一主義の影響も、テクニックの選択に関与していることも憂慮される米国の現状です。


米国カイロの歴史と潮流その5(107号掲載)

カイロプラクティックの三位一体の哲学・科学・芸術の内の芸術に属するテクニックは、発展期には様々なものが開発されていきました。カイロプラクティックの発展者と呼ばれるBJパーマーDC(以下、BJ)は、パーマーリコイルテクニックを開発した後、メリックシステムという全脊柱を対象としたテクニックをジェームス・ウィッシャーと共同で開発。そしてBJは、パーマーターグルリコイルテクニックという豆状骨でより精密なコンタクトを行い、トーク(捻転)をリコイル(跳ね返る)とターグル(トグル・環)に併せて行う方法を考案。そして、メジャーとマイナー論から最終的にホールインワン(HIO)或いはパーマー上部頚椎スペシフィックと呼ばれるテクニックを開発しました。このテクニックは、その後、NUCCA、グロスティック、ケールニーチェスト、ブレアー、アトラスオーソゴナルなどの上部頚椎テクニックを派生する基となりました。

C.S.ガンステッドDCは、ガンステッドテクニックという全脊柱及び四肢のテクニックを開発しました。これは、診察・温度計測機器・X線分析・アジャストまで体系化されたシステムであり、発展型或いはアドバンスドテクニックとして大きな影響を与えました。BJのHIOとガンステッドテクニックに共通するのは、どちらのテクニックもサブラクセーションを見つけ出すために、その診察においてNCMやナーボスコープといった皮膚温度計測機器を用い、X線フィルム分析を行うなど、科学的・客観的で再現性のあるカイロプラクティック独自の診察法を行い、サブラクセーションを素手でアジャストするというカイロプラクティックの定義を遵守した王道のテクニックであることです。

しかし、どちらのテクニックも修得には才能と素養、信念と哲学、そして努力と継続という困難を伴うため、途中で修得を断念し、素手でアジャストせず器具を用いる素人でも誰でも直ぐに行えるテクニックに宗旨替えするカイロプラクターが多いことでも共通しています。日本人は手先が器用な人が多い民族ですが、米国人はそうではない人が多い上に、米国人に特有の気質などで、テクニックが修得できず結果が出ないことに対して、自分を正当化してテクニックに責任転嫁し、より平易なものに移っていくことを、留学し、臨床して米国に長く在住することで嫌と云う程見てきました。


米国カイロの歴史と潮流その4(106号掲載)

カイロプラクティックの発展期には、創成期の原始的な診察・分析法や椎骨の矯正方法(現在ディバーシファイドと呼ばれる)に加えて、様々なテクニックが開発されました。初期の頃には、とにかく脊椎骨を如何に動かすか、ということでアメリカ原住民(インディアン)に伝わる方法、欧州の接骨を起源とする方法、中国や日本など東洋を起源とする方法などを含め、カイロプラクター達は研究し、創意工夫して効果的な矯正方法を考案、導入していたようです。

アルバ・グレゴリーDC,MDは、1907年にDDパーマーと共同でパーマー・グレゴリー・カイロプラクティック学校を創立したことで知られていますが、アジャストメント アンダー テンションというトラクション(牽引)を掛けて行う矯正法を考案し推奨しています。しかし、DDパーマーは、そのような牽引は整形外科かオステオパシーで、カイロプラクティックではないと否定していました。A.P.デービスMD,DO,DCは、眼科学とオステオパシーとカイロプラクティックをごちゃ混ぜにしてニューロパシーというものを考案しました。

歴史的に見ても、西洋医学を学んでMDとなった者が、その後にDCの学位を受けても、所詮付け焼刃で本物のカイロプラクターとしての哲学やアジャストの技術を修得したと思われる者は殆ど見当たらず、最終的にカイロプラクティックに別のモノを混ぜて独自の治療法・テクニックとし、医師の社会的地位を利用して執筆や講演などで拡散しては、カイロプラクティックの専門職を混乱させる事が散見されます。

対照的に、BJパーマーは、大学卒でもなく「低学歴」として、MDやBSなどの学位所持者でもあるナショナル系のDCなどから蔑まれることもありましたが、カイロプラクティックの発展者と称されるように、その哲学・科学・芸術の全てを進化させています。BJパーマーは、『エキスポジション オブ オールド ムーブ』という著書で、創成期のカイロプラクター達が導入し、また用いていた様々な矯正法、例えば患者の胸部を手で保持しながら膝で胸椎を押す、木の棒を脊椎にあて木槌で打つ、踵で踏む等の矯正法をカイロプラクティックではない、そして過去の矯正法として分類、写真入りで解説しています。


米国カイロの歴史と潮流その3(105号掲載)

カイロプラクティックの業界内の問題は、その創成期の頃には既に存在していました。DDパーマーの卒業生達が、診療所だけでなく学校も作ってカイロプラクティックをアメリカ各地で教え始めていましたが、創始者のDDからパーマーカイロプラクティック学校(現大学)をBJパーマーが1906年に引き継ぐと、BJの運営方針などに反発した職員らがパーマー学校を辞めて新たな学校を設立しました。その代表が、同年にパーマーを卒業したばかりのジョンFAハワードが創立したナショナルです。

しかし、DD自身も1902年には卒業生のトム・ストーレイがカリフォルニア州サンタバーバラに学校を設立するのを手伝ったり、1907年にDDパーマーカイロプラクティック学校を設立したりするなど、徐々にカイロプラクティック学校は全米に乱立します。1923年にはBJが率いるパーマー学校の学生数は3100人に達しており、総本山として威容を誇っていましたが、同年には全米に50校を超えるカイロ学校があったと言われています。

創成期にはカイロプラクティックの理論も手技もまだ未成熟でした。無免許医療行為などで逮捕されたカイロプラクターの裁判で勝つ為もあり、BJが理論や哲学を発展させ、1909年に世界中の全ての専門職教育機関に先駆けて「X線機器の取り扱い」の公式講座を開始、1924年に温熱検査機器であるニューロカロメーターを導入するなど、科学的に進化させてきました。しかし、カイロの学校が乱立するとその教育内容に著しいレベルの差が生じる結果となりました。

また、学生確保の競争が熾烈化し、本家であるパーマー学校には全米及び海外からも学生が集まりますが、その他の学校は苦戦するようになりました。そのため、カイロプラクティックのレベルだけでパーマーと競合するのは得策でないと判断する所も現れたのです。

そして、創始者DDの、「カイロプラクティックとは、自然の法則に基づく、哲学・科学・芸術であり、不調の原因となる脊柱上の分節を、素手によってのみアジャストをするシステムである」という定義と、「お断りする。私はカイロプラクティックを純粋なまま貴方達に与えた。もし他の治療法と混ぜてしまうと、その独自性(Identity)はすぐに失われてしまう」という言葉を蔑ろにして、ナショナルなどは理学療法を取り入れたのです。


米国カイロの歴史と潮流その2(104号掲載)

(102号より続く)それ以来、表面的には米医師会からのカイロプラクティックへの誹謗中傷は終焉したように見える。しかし、21世紀の今日でも、「薬」を用いないカイロプラクティックの壊滅を願う製薬業界と、製薬業界から経済的支援を受けている医師からのカイロプラクティックへの攻撃は続いている。

その典型的な例が「カイロプラクティックを受けるとストローク(脳卒中)を起こす危険がある」というものだ。この件に関しては、ハルデマンDC・MD・PhDらによるカナダでの大規模研究や同種の研究で「カイロプラクティックによって脳卒中が起こる確率は1千万回に5~10件」や、「脳卒中が起こるリスクはMDの診療後もDCのケアの後も有意差はない」と報告されているにも関わらず、いまだに医師による論文やマスコミの記事などでしばしば目にする。

2000年の米医師会誌にスターフィールドMD・MPHの論文で報告されたように「米国市民の死亡原因の第3位は医師・医療であり、毎年約25万人の患者が医療によって死亡している」ような西洋医学に「カイロプラクティックは危険」などとは言われる筋合いはないのではないかと思う。医師の中にも個人的にはカイロプラクティックに理解があり、自らの健康管理にカイロプラクティックを用いる者もいないわけではない。あるいは、互いに患者を紹介しあう関係を構築することが出来ないわけではない。しかし業界としては所詮異業種であり、同胞ではあり得ないのが現実である。世界人類から戦争や闘争が無くならないように、カイロプラクティック専門職への攻撃は今後も続くのであろう。

しかし、カイロプラクティックの戦いは外敵に対すものだけではない。業界内部の争いは更に根が深い問題として存在している。その原因には、まだカイロプラクティックの哲学や理論などが充分に発展し体系付けられていなかった1897年に、創始者のDDパーマーが学校を創ったこと、初期の頃の生徒には医師(MD)が多かったこと、そしてDDが発行したディプロマ(学位証書)には、ドクター・オブ・カイロプラクティックであることを証すると共に、DDから教わったことと同じことを他に教え、臨床することが出来ると書かれていたこと等がある。それは、カイロプラクティックを全米に普及させる上で必要だったのだろうが、業界内にいずれ起こる問題の火種にもなった。


米国カイロの歴史と潮流その1(102号掲載)

カイロプラクティックは、その創成期の頃から様々な困難や戦いを経験してきた。外部との争いは1906年にDDが「無免許医療行為」で訴えられ、23日間スコット郡刑務所に収監された事で始まった。

世界初のカイロプラクティック団体であるユニバーサルカイロプラクターズ協会の最初の法的闘争は、ウイスコンシン州での1907年の森久保繁太郎DCに対する「無免許オステオパシー行為」による訴訟だった。当時、結果を出して患者からの評判が高かったカイロプラクターに対し、医師達は嫉妬し、カイロプラクティックは医療の一つであり、MDやDOの免許無しで行うことは無免許医療行為であると訴え、カイロプラクターに「無免許医療行為」を認め、罰金を払うことを要求したのだ。

それに対して多くのカイロプラクター達は、「私が行ったものはカイロプラクティックであり、医療(西洋医学やオステオパシー)ではない」と毅然として反論し、罰金の支払いを拒否して刑務所での拘留を選び、専門職を守るために戦った。こういったカイロプラクティックに対する西洋医学からの攻撃に対し、BJパーマーは、カイロプラクティックの哲学・科学・芸術を発展させて体系化し、その理論の違い、教育の違い、臨床の違いといった独自性を証明し、森久保DCの訴訟を始めとする多くの法廷での闘いをカイロプラクティックの勝利へとつなげてきた。

そう、「カイロプラクティックとは、自然の法則に基づく、哲学・科学・芸術であり、不調(疾病)の原因となる脊柱上の分節を、素手によってのみアジャスト(矯正)をするシステム(体系)である」という創始者DDの定義に基づき、それを発展させたBJの哲学がなければ、今日のカイロプラクティックは存在しなかったのだ。もしカイロプラクティックの学校での教育が、解剖学、生理学、病理学、診断学等だけなら、それは医学部の教育と同じであり、独自性がなく存在理由も無いということで裁判に勝てなかっただろう。哲学を教えていたからこそ、MDやDOの教育とは違う独自の教育と認められたのだ。

理論も同様に、神経機能を妨害する脊椎の不整列であり、哲学に基づく、「サブラクセーション」を対象としていたからこそ、そして臨床でもMDやDOが行うマニピュレーションではなく、アジャストメントでサブラクセーションを取り除くことのみを行っていたからこそ裁判で独自性が認められ、無免許医療行為の濡れ衣を着なくて済んだのだ。

カイロプラクティックが西洋医学やオステオパシーとは異なる独自の専門職と認められ、法制化して免許を発行する州が増えてくると、医師と医師会は「カイロプラクティックは非科学的なカルト」などとネガティブキャンペーンを展開して攻撃する戦略へと転換した。それに対しウイルクDCら有志が米医師会(AMA)を相手に訴訟を起こし、1987年8月27日、米国フェデラル裁判所において、スーザン・ゲッゼンダナー裁判官は米医師会に「有罪」の判決を下し、米医師会の全面敗訴となった。

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