海外便 from アメリカ

松下 順彦DC



カイロの倫理とエゴ(121号掲載)

カイロプラクティックという言葉は、125年前には存在していませんでした。

1895年の9月18日に米国アイオワ州ダベンポートのライアンビルの4階の一室で、磁気治療家のDr.ダニエル・デービッド・パーマー(以下、D.D.)が、17年間難聴であったハービー・リラード氏に、「この後方に突出した椎骨を押し戻したら神経の機能が回復して難聴が治るに違いない」という確信に基づいて行ったアジャストメントによって創始された新しい医療システムに、その創始者が付けた名称こそがカイロプラクティックです。

遵って、カイロプラクティックという名称とその定義はD.D.によって定められ、誰もその定義を書き換える権利はなく、何人もカイロプラクティックの名の下に羊頭狗肉の如く、定義に合わない方法や他の療法を行うことは許されないことです。

今日、我々カイロプラクターが胸を張ってカイロプラクティックを業とすることが出来るのは、創始者のD.D.のお陰だけではありません。

創成期の頃にはD.D.もB.J.(D.D.の息子)も無免許医療行為などで起訴され、同様に日本人初のDCである森久保重太郎DC,Ph.Dや、多くのパイオニアであったDCたちが、カイロプラクティックの効果と盛業に嫉妬した医師らによって訴訟を起こされて戦ったのです。

最も多く投獄されたカイロプラクターとして知られているのは、リーバーDCです。

リーバーDCは、1928年にパーマースクール(現パーマー大学)を卒業しオハイオ州で開業しましたが、当時のオハイオ州にはカイロプラクティックの免許があるものの「制限付き医師」という位置付けで西洋医学の医師の管理下にあり、リーバーDCは「ナンセンスだ」と無免許で開業し、盛業していました。

そして12回以上も嫉妬した医師と医師会、州の免許ボードなどから訴えられて逮捕・収監されたのです。

(写真①)Eブック参照

リーバーDCは、カイロプラクティックの独自性を護り、カイロプラクティックの専門職を護り、米国市民の医療選択の自由を護るために自らを犠牲にしても戦ったのです。

リーバーDCは2000年2月7日に93歳で他界するまで、70年以上に亘ってカイロプラクティックを臨床し、ICAの副会長としてB.J.を支えた真のストレート カイロプラクターでした。

リーバーDC以外にも創成期のDCたちの多くが自らの身を犠牲にしてもカイロプラクティックの独自性を護るために、無免許医療行為で訴えられる度に「私が行っているのはカイロプラクティックであって、西洋医学やオステオパシーではない」として無罪を訴えて戦い、投獄され、罰金を科されても主張を固持し続けたのです。

(写真②)Eブック参照

そして、彼らの自己犠牲的・献身的な戦いと、彼らを応援する患者達、またB.J.パーマーDCとUniversal Chiropractors’ Associationの支援などによって、カイロプラクターたちは法廷で勝利を収め、やがてカイロプラクティックの法制化へと繋がり、全米50州で、そして世界の先進諸国での法制化に続いているのです。

人として、カイロプラクターとして高い倫理観を持つ彼らのお陰で、我々は今日もカイロプラクティックを臨床することが出来るのです。

自分の都合やエゴでカイロプラクティックを金儲けの道具として使ったり、西洋医学に偏向して専門職の独自性を破壊するような言動をする者は、その低い倫理観でリーバーDCのような偉人達に対して恥ずかしいとか、申し訳ないと思わなければならないのではないでしょうか。


カイロの真価①(120号掲載)

カイロプラクティックは西洋医学とも東洋医学とも異なる独自の哲学・科学・芸術を持ち、サブラクセーションを代表とする独自の理論に基づいて進化・発展し、124年もの間、多くの患者を救い、健康維持、アスリートなどの能力発揮やケガの予防などさまざまな形で世界人類に貢献してきました。

その最も特殊なところは、痛みなどに代表される「症状」をケアの対象とせず、不調の原因である「サブラクセーション」を見つけて取り除くというところです。

例えば、「カイロプラクティックは突発性側弯症を治せるのか」ということを問う人がいます。しかし、側弯症には遺伝的要素の関与がある場合や、脳の問題が影響する説もあり、原因は必ずしも一つとは限りません。

私はカイロプラクティックで突発性側弯症が治せるかどうかは明言しません。何故なら側弯症は症状であり病名だからです。

しかし、突発性側弯症といわれる患者をケアしたことはあります。

写真1 Eブック参照

写真1は12歳の男子で親御さんが姿勢の悪さを気にして連れてこられた症例です。

写真2 Eブック参照

写真2は胸腰椎部が中心の側弯の症例です。

写真3 Eブック参照

写真3は頚椎と腰椎に傾きがあるタイプのS字状側弯の症例です。

カイロプラクティックによってサブラクセーションが取り除かれ、それが原因で起こっていた側弯曲は減弱したといえると思います。

カイロプラクティックは症状を治療したり、背骨を真っ直ぐにするものではありません。しかし、正しくカイロプラクティックを施せば、結果は出るものです。

C.S.ガンステッドDCは、「結果が出ない時は、カイロプラクティックの原理・原則に疑問を持つ前に、自分の臨床の方法に問題がなかったかを見直せ」という言葉を残しています。

カイロプラクティックは素手でサブラクセーションをアジャストするものであり、それで結果が出せてこそカイロプラクターなのです。

そのために我々は哲学を学んで原理・原則を理解し、進むべき方向性を確認し、最新の科学を研究して発展させ、芸術としての手技の鍛錬を継続するのです。

いくら症状が良くなっても、素手でサブラクセーションをアジャストしていなければ、それはカイロプラクティックではありません。

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